ざんねんないきもの事典

「ざんねんないきもの事典」 今泉忠明 監修 高橋書店

新聞で<子どもから大人まで見て読んで楽しいいきもの事典>の本の紹介があり手に入れた。

1ページに一つ、かわいいイラストと文章で綴られている。

第1章 「ちょっぴり進化のお話」は、ちょっと専門的な解説が分かりやすく書かれている。

第2章 「ざんねんな身体」は、45体の生物の例えば<オオアタマガメは頭が大きすぎて甲羅にはいらない>とか、<カバのお肌は超弱い>とかの話

第3章 「ざんねんな生き方」は、45体の生物の例えば<アライグマは食べ物を洗わない>とか、<ウサギは自分のうんこを肛門からじかに食べる>とかの話

第4章 「ざんねんな能力」は、32体の生物の例えば<テントウムシは鳥が吐き出すほどまずい>とか、<クマムシが無敵なのはたる状態で乾燥(ゆっくり時間をかけて水分をぬいた状態)している時だけ>とかの話

です。中でもクマムシは150度の高熱にもマイナス273度の低温にも負けず、宇宙空間で10日間生き残り、30年間冷凍保存されていても復活して生きる、地球最強の生物ということを、2年ほど前に知ってから注目していた生物なので、急な乾燥には弱く、ドライヤーの風で乾かすとあっさり死にますという話には衝撃を受けてしまった。とても勉強になった。

表紙の絵もとても可愛いので載せたかったのだけれど、どうしてもアップできない。お助けマンの太田路子さんが亡くなってしまい、今更ながら残念に思っています。勉強して次の本の紹介では写真も載せられるように頑張ります。

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時の止まった赤ん坊

dscn1514時の止まった赤ん坊 曽野綾子 著  新潮文庫(上下)

主人公はカトリックの「十字架の宣教会」修道女としてアフリカのマダガスカル島の助産施設で働くシスター入江茜である。助産婦と派遣されて3年たった。

貧困と飢餓が支配するこの国では、費用が払えなくて満足に診察をうけられない妊婦が多く、また避妊の知識がないので出産も10回を超える人はざらで、栄養不足から正常に育つ赤ちゃんは少ない。中でも15回出産して育っているのが3人という家族もいる。

薬品も金も不足しがちな状態の中、胎児と生まれてくる赤ん坊の命を助けるために身を粉にして働く修道女達の仕事の実情を生き生きと克明に描いている。

もう一人重要な登場人物小木曽悠はマダガスカルに赴任して住む商社マンである。彼は茜の亡き姉の元婚約者で、度々彼女のところにやってきては、シスターの仕事に疑問を投げかけたり、さりげない支援をしている。

しかし彼は、修道女たちは神様から授かった命をどんなことがあっても守ろうと必死になっている活動に、様々な疑問を投げかけている。

彼の疑問は私達日本人にとっては常識である。避妊の知識もなく毎年毎年妊娠しては育てられないお母さんたちへのお世話や生きながらえられぬ乳児のお世話を神様から預かった命と愛しんで受け入れる修道女たち。

私はミッションスクールで育ったカトリック信徒であり、ネパールで頑張るノートルダム教育女子修道会のシスターたちを少し知っているので、十字架の宣教会のシスターたちの生活や尊いお仕事を察することが出来たのではあるけれど、私自身信仰の薄い俗人なので、ムッシュー小木曽の気持ちもよく理解できて大変興味深く読んだ。

しかしカトリックの女子修道会をご存知ない方にとってこの本は理解されるんだろうかと心配にもなった。

 

 

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あなたに話したい

「あなたに話したい」 晴佐久昌英 著  教友社
著者は、1957年生まれのまだ若いカトリック神父様です。
カトリック教会では毎日聖堂でミサというイエスキリストの最後の晩餐の儀式が行われます。
儀式の中で福音書が読まれますが、その時神父様の説教があります。
この「あなたに話したい」は2003年5月から2004年4月までの1年間、東京高円寺教会でなされた晴佐久神父様の説教集です。
神父様の説教は多くの人々を感動させ、全国から神父様の話を聞くためにバスを連ねて教会を訪ねてくるほどと聞きました。

(カリスマ性のある瀬戸内寂聴さんや美輪明宏さんのよう、、?)

私は晴佐久神父様のことを全く知らなかったので知りたくなりました。
沢山の本を出されている中で「あなたに話したい」というのが、神父様の思いを直接感じるためには良いのかなと思い注文しました。
内容は日頃から他の神父からも聞かせていただいている普通の説教だなあと思いながら真面目にページを繰っていました。
ところが中に一つ衝撃をうけた説教がありました。死者を送る葬儀のミサの中での説教です。
少し長いですが引用します。

・・・・・・
1昨日、ご葬儀ミサがありました。
尊い生涯がついに完成し、神様のもとへうまれ出ていったのです。
その誕生をお祝いしました。
私達キリスト者は、葬儀ミサを喜びのうちにお捧げいたします。だって良い準備、辛い準備のはてに、ようやく本当にまことの親のもとに生まれ出て、親と対面出来るのです。地上にのこされた私達が、地上の感覚でちょっと悲しむのは当然ですが、死の本質は誕生です。ついに本当に生まれたのであって、地上に残された私たちはまだ生まれぬ胎児であり、死者にあこがれて天を見上げるのが葬儀ミサです。
・・・・・・

葬儀を喜びの日と遺族たちに伝えるというのはどうなんだろうかと考えてしまいました。
この時の死者は96歳だったから、喜びの日と言えなくはないかもしれない。けれど神父様は「1歳だろうが96歳であろうが、死は誕生です。」と断言されています。
おそらく幼い子供を亡くした遺族の葬儀であっても「喜びの日」と話されるのだろう。そして悲しみに打ちのめされた人々の心にそのお言葉は響き、悲しみから立ち直れる人々が多くいるほどに心に響く話法なのだろう。

晴佐久神父様の説教はユーチュウブにアップされ世界中で聞くことが出来、何万人の方々が神父様の話に惹きつけられ、耳を傾け感動しているという喜びの声が広がっていると言うことです。

私も早速ユーチューブを開き、お姿お声お話に接しました。
確かに惹きつけられました。

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あなたがいる場所

あなたがいる場所「あなたがいる場所」 沢木耕太郎著  新潮社
満員電車、フェスタに集まる人々、スクランブル交差点をドッと渡る人々。
何百人もの群衆だけれど、一人ひとり別個に違った生活を送っている。
著者はそんな人々の中から9つの話をつまみ出し、9編の短編の小説に仕上げた。
1, 「銃を持つ」女子高生の微妙な友人関係の話
2, 「迷子」親の離婚で母と暮すユウスケが、公園で母親の虐待から逃げ出したらしい女の子に関わってしまう話
3, 「虹の髪」通勤のバスでいつも会う虹の髪を持つ若い女性に惹かれる中年男性の話
4, 「ピアノのある場所」貧しい少女ユミコが家庭の事情で引っ越ししなくてはいけなくなり、お別れにお金持ちの級友マリちゃんを訪ねる話
5, 「天使のおやつ」学童保育で校庭で遊んでいたアサミが滑り台から落とされて死んでしまう話
6, 「音符」静子は、夫を妻子から奪って結婚し幸せに暮らしていた。しかし夫は病気で死んでしまう。夫は別れた妻子のことを思っているようだったと気付かされる話
7, 「白い鳩」高校生のいじめの問題。最近残酷ないじめの話がニュースになっているが、そまで酷くはないよくあるちょっとしたいじめだけれど、本人にとっては重い体験の話
8, 「自分の神様」家庭教師の生徒の父親と不倫関係になっている奈緒は別れなきゃと思っている話
9, 「クリスマス プレゼント」半年前に妻が亡くなり、息子は家を出ていて一人暮らしもまだ慣れない石川。年末に新しい肌着を家族のために揃える習慣があったが、生前妻もそれをしていた。しかし送るのがいつも12月20日と決まっていたのでクリスマス プレゼントを兼ねていたのだと気づきプレゼントを送る話。

著者は、教科書に載っていたわかりやすい短編小説を出発点として、文学の森に分け入ることになったという経験があり、少年少女に最後まで読み通すことのできる<わかりやすい>短編小説を書きたいと思われて出来上がった作品です。

勿論わかりやすいというのは重要だけれど、内容はそれぞれ心を打たれる素晴らしいものです。私は中でも第9話の<クリスマス プレゼント>が素晴らしかった。ここでオチを紹介したいけれどしません。是非読んでください。

高校生の孫達に、此の本をクリスマス プレゼントしようと思います。

写真はクリックすると大きくなります。第7話の絵です。

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ランナー

「ランナー」 あさのあつこ 著  幻冬舎文庫
長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の碧李(あおい)のアスリートとして生きる壮絶な物語である。

小さいときから走るのが大好きだった碧李は陸上部で頑張り、両親との3人家族で平和に暮らしていた。

ある日父親の弟夫婦が4歳の可愛い娘を残し事故で亡くなってしまう。両親は遺された杏樹(あんじゅ)を娘として引取り4人家族になって暮すことになる。

ところが父親が不倫をし両親は離婚することになって母と碧李と杏樹と3人の暮らしとなる。

そのころ走者としてこれまで良い記録を保っていた碧李が大会で失速してしまい自信を失う。その上母親が妹の杏樹をひどい虐待していることに気づく。 

碧李は母親と杏樹を守るために部活を止める決心をし退部届を出す。

しかし監督、女子マネージャー、陸上部の親友久藤たちに、走ることを辞めてはいけないと励まされ、自分は何故走るのを止めようと決意したのかをよく考えてみる。

家庭の事情からと自分に言い聞かせていたが、本当は大会で失敗したため走ることが怖くなり、逃げていたのかもしれないと思う。

とにかく走ることに集中しよう。壁にぶつかり悩みそれでも走ることで救われることがある。

杏樹は父親が引取ることになり、家族もアスリートとしての碧李もスタート地点に立ちゴールを目指して精一杯走ろうとしている。

ソチのオリンピックが終ったばかり、輝かしいアスリートたちの映像をみながら、選手一人一人楽しいことより苦しい体験も多く、でも乗り越えていくなかで記録より人間として成長していく自分を感じとり、アスリートとしての生きる道を走り続けているのだろうと思わされた。

来週始まるパラリンピック。選手たちの道のりも想像を絶する大変だったことだろう。

全国に何万人もいるちびっ子アスリートたち。記録よりも得ることが多いことを体感しているからこそ苦しいトレーニングも続けているんだろうなと思いを巡らした。

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幸福の選択

幸福の選択 佐江衆一著 新潮社
昭和八年生まれの主人公津村昭二は、私より10歳ぐらい年長だけれど、同じ時代に生きてきた者として感慨深く読んだ。終戦時は情報も少ない時代だったとはいえ、同じ日本でこんなに戦争で過酷な人生を歩まなければならなくなった人が何万人もいたことを、空襲にあわなかった京都でのんびり(親は必死だったらしい)過ごした私は、同じ日本人としてはっきり知り得なかったことを恥じている。
先日も藤原ていさんの「流れる星は生きている」という満州からの3人の幼子をつれての過酷な引き上げ体験小説を読んで感銘を受けたばかりで一層自分の無知を認識したのだった。

1993年2月60歳を迎えた昭二は、職場の仲間に惜しまれながら定年を迎え退職することになった。
さてこれからの人生をどのように生きるか?というのがテーマである。

昭和19年(1944年)夏、東京では空襲のおそれがあるといって23万人の3年生から6年生の子どもたちを集団疎開させることを決めた。浅草に住んでいた小学校六年生の昭二もそのうちの一人だった。家族は両親と出征中の兄と5歳の妹で昭二だけ集団疎開にいくことになり同級の友とともに東北で過酷な集団生活をおくることになった。10ヶ月後の3月8日になって夜行列車で六年生だけは一足先に親元に帰れることになり、喜んで9日早朝、家族のもとに帰った。両親と妹の四人家族。無事を喜び合ったが東京は空襲警報が絶え間なく発令され危険な状態だった。翌10日は陸軍記念日で空襲されるかもしれないから気をつけなければと話あって眠りについたが夜半に空襲。1665トンの高性能焼夷弾を満載したB29325機が東京の下町を襲ったのである。それからは阿鼻叫喚。逃げ惑う中母妹、父親とはぐれ、生き残ったのは家族で昭二のみ、彼の周りは死体と燃え尽きた焼け野原だった。その日だけで死者83,700人負傷者4万人余り、罹災者108万人にのぼった。

戦災孤児、戦災浮浪児となった昭二は、同じ境遇の戦災孤児と共にがむしゃらに飢え死にしないで生きるために知恵を働かせて生きてゆく。
国の戦災浮浪児一斉取り締まりにかかった昭二は遠縁の親戚に無理やり引き取られ下僕のように働かせられながら勉強し高等学校を卒業し東京に家出をする。

そこで浮浪児時代に進駐軍相手に靴磨きなどで鍛えたアメリカ英語を武器に働き口を必死で探しコピーライターとして生きてゆく。

そのころ集団就職で山形から上京し東京で働く祐子を見初め結婚し二人の子どもに恵まれ30年ローンを組んでマイホームも手に入れ日本の高度成長に乗っかり企業戦士となって収入も安定し定年を迎える。

昭二には立派に生き抜いてきたという自負があるけれど、自分に正直な仕事を生きがいにして生きてきたという実感がない。二人の子どもの教育は妻の祐子に任せ、昭二の気づかぬまま子どもは成長し妻の祐子も栄養士の資格を取り親の介護に関わり自立している。昭二のお陰で生きてきたという気配はない。昭二は家族から期待されず気持ちはひとりぼっち。これから何を生きがいに生きていくことになるのだろうと、自分の生きてきた道を逡巡しながら模索する。

昭二の場合は、出発点が戦争孤児という過酷な状況から始まりますが、戦災から復興の高度成長期に生まれた現在の団塊の世代の人々も、今定年退職期を迎え、生きがいを求めて右往左往して同じ問題を抱えている。

昭二は生涯を振り返って、人生には幾つもの節目がありその節目で幸福に生きる道を選択して行きてきたなあと気付く。

その節目で選んだ道は自分にとって幸福の道だったのか?

同じ仕事仲間の売れっ子だったコピーライターが若くして自殺し、残した遺書
・・・・
リッチでないのに
リッチな世界などわかりません
ハッピーでないのにハッピーな世界など描けません
「夢」がないのに
「夢」をうることなどは、、、とても
嘘をついてもばれるものです
・・・・・
昭二は、これからの人生は自分が正直に求めているもの、人々が求めているものに向き合い余生を過ごそうと決意したのであった。

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村上春樹 雑文集

DSCN1393「村上春樹 雑文集」 村上春樹著 新潮文庫
村上春樹のデビューから伝説のスピーチまで、未収録・未発表のエッセイや文章が大集合。
という文庫本の帯にひかれて購入しました。

何と69編からなり、文庫本とはいえ2センチぐらいの厚さ。
それも一つ一つ読み応えのある深い話題(軽いものもあるが)がつまっていて、面白くて読み進むのがもったいなくて読み終わりたくない気持ちになった。

前書きから始まり*序文・解説など4編 *あいさつ・メッセージなど11編 *音楽について12編 *「アンダーグラウンド」をめぐって3編 *翻訳すること、翻訳されること15編 *人物について6編 *目にしたこと・心に思ったこと7編 *質問とその回答2編 *短いフィクション3編 *小説を書くということ6編 *解説対談(安西水丸×和田誠) *あとがき
からなる69編です。
(安西水丸と和田誠の対談の他は全部村上春樹の肉声です。この対談のあと安西水丸さんは亡くなりました。村上春樹さんについての楽しい対談でした。)

音楽についての項は私がジャズのことに詳しくないので少し難しかった。けれど村上春樹の小説はジャズあるいはクラッシック音楽のリズムにのって書かれていることが分かった。人を感動させる音楽というのは、ただ楽器を奏でるだけでは成り立たない。小説も文章を書くだけでは人の心をうたない。そこには作者のソウル・魂が湧き出ていないと音楽も小説も成り立たないという。

「雑文」で触れられた作品全てを読みたくなった。以前読んだ本も再読したくなった。

春樹ファン必読の本です。

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8月の6日間

DSCN1379「8月の6日間」 北村薫 著  角川文庫
先月から立て続けに中学からの友人を亡くしたりして、人間の生死を自分の問題として考えることが多く、気分的に落ち込んでいたので、軽い本を求めて買った。

主人公は雑誌の副編集長をしている40歳を少し超える独身の女性。
上司との関係や恋人との別れなどの煩わしい日々の出来事に鬱々している時に、山の魅力に出会った。グループの登山ではなく単独行である。その5回の山行の記録を日記形式で書いている。

★9月の5日間(燕岳から憧れの槍ヶ岳) ★2月の三日間(雪山ツアー磐梯山) ★10月の5日間(上高地から常念岳) ★5月の3日間(八ヶ岳白駒の池) ★8月の6日間(三俣蓮華岳、黒部五郎小屋)の5篇である。

冬の磐梯山のほかはいずれも私にとって登山経験のある親しい山々だったので、4季折々の自然の美しさ、険しい登山道のこと、山小屋の様子など手に取るように共感でき懐かしく楽しく読めた。山行きのための服装、携帯品、非常食などもきめ細かく記されていて完璧であり落ちこぼれはない。北アルプスの峰々を思い出してワクワクした。

しかし重要な事は、この本は登山の案内書ではないということである。
周りの景色の美しさに目を奪われ、息を切らせて登る登山道を歩きながら絶えず彼女の頭に浮かぶのは過ぎ去った楽しい思い出や悔やまれる体験である。
登山というのを媒介に主人公の生き様が自然に描かれている。それがこの本のテーマなのです。

このように一見紀行文の形に見せながら、人の心の深さを見事に小説に表すことの出来る北村薫の筆力には感服した。

巻末の解説で北村さんは一度も山に登らずこの本を書かれたと暴露されていて心底驚いた。信じられない。
凄いの一言である。

面白かった。癒やされた。

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日本一小さな航空会社の大きな奇跡の物語

DSCN0549【日本一小さな航空会社の大きな奇跡の物語 】 奥島透著 ダイヤモンド社

この本は、日本一小さいと言われている航空会社「天草エアライン」を、どん底から救い上げた前社長奥島透さんが書かれた復興ドキュメントです。

3年前の秋のこと。友人から「従兄が日本航空をリタイヤした後天草エアラインの社長をひきうけ、なんだか傾いているらしい会社を復興するというので頑張っているらしいのよ。天草に一緒に行かない ?」と誘われました。

天草は天草四郎などのキリシタン史に関心があり数回行っているけれど、イルカウオッチングというのを一度体験したかったので「行きたい行きたい」と伊丹から、可愛いイルカが装飾された双発機に乗り込みました。

航空スタッフの方々は皆さん大変親切で、天草空港には奥島社長じきじきのお迎えがあり、恐縮しながらもすっかり甘えてしまいました。レンタカーやイルカウオッチングの漁船の手配もしてくださりダイナミックなイルカの群れを目の当たりにみて大興奮しました。また、中でも私が資料から見つけてきたキリシタンの「ペーの墓」に行きたいというと、街の外れの藪の中にあるペーの墓石群のありかを見つけて仕事の合間を縫って案内してくださったり、私の不注意からホテルの庭の蔦で覆われた地面に落とした指輪を支配人とともに探し見つけ出してくださったのには奇跡としか言えないものでした。

これらのご親切は友人の従兄ということからの特別のご配慮からかと思っていたのですが、この本を読んで、奥島透さまご自身のご人格とわかりました。

苦境に陥っていた天草航空では、社長自らが率先して掃除などの雑用から取り組まれ、日航時代から培われた人脈、文化人との交流を大切にされて、経営者として持ち前の知恵とリノベーション力を発揮された結果が奇跡の復興に結びついたのでしょう。

最近話題になり人気を呼んだ「下町ロケット」の話も面白かったけれど、天草エアラインの復興のドキュメントはそれを遥かに凌ぐ手に汗握る面白さでした。
天草出身の演出家小山薫堂さんの協力もあったようですので、ドラマ化されれば当たると思います。

この本を読むと天草エアライン「みぞか号」に乗って天草に行きたくなるに違いありません。ぜひ読んでください。

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俳句という愉しみ

haiku「俳句という愉しみ」ー句会の醍醐味ー 小林恭二著 岩波新書

プレパトという木曜日の19時からのテレビ番組が人気を呼んでいる。
何故か今日は放送されなかった。4月から番組が変わるのかも。
俳句、華道、食の達人が、素人の芸人さんの作品を評価する番組です。
俳句の部門、俳人夏木いつき先生のウイットに富んだ辛口批評と添削がとても面白く勉強になります。

句会の仕組みは色々ありますが、出席者が与えられた課題で俳句を作り、書記係がそれを集めて全部の句を無記名で清書し、出席者に配り、その中から自分の句以外の優れた句を選び、複数の人から選ばれた句を主宰の先生が指導し添削するというのが基本である。

「俳句という愉しみ」では、若手俳人でもある小林恭二さんと岩波新書編集部の川上隆志さんが句会を企画し、第一級の俳人たち(三橋敏雄、藤田湘子、有馬朗人、摂津幸彦、大木あまり、小澤實、岸本尚毅、岡井隆)に奥多摩・御嶽渓谷の河鹿園に集まってもらって開かれた風花句会の記録です。
ここでは皆さん俳句の達人ばかりなので主宰になる人はいなくて、小林さんが会をすすめています。達人たちが投句された無記名の80句から互選し、選ばれた句についての、一流俳人たちによる喧々諤々のコメントがとっても面白いのです。名前を明かしたあとの談笑がまた面白い。勿論添削はされません。

実は、私もグループを作っていますが指導してくれる主宰はなし。ド素人のドングリの背比べ集団だけれど、その句会の愉しさ雰囲気は俳句のレベルは雲泥の差ながら風花句会と全く同じです。私達の場合、字の上手な人が清書してみんなの句を配ってくれます。達筆で書いてもらうと、私の句もぐっと上手に見えるのが可笑しい。

俳句を嗜まれている方、是非読んでください。名人たちの句会に仲間入りしているような感じがしてとても愉しめます。

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