主人公はカトリックの「十字架の宣教会」修道女としてアフリカのマダガスカル島の助産施設で働くシスター入江茜である。助産婦と派遣されて3年たった。
貧困と飢餓が支配するこの国では、費用が払えなくて満足に診察をうけられない妊婦が多く、また避妊の知識がないので出産も10回を超える人はざらで、栄養不足から正常に育つ赤ちゃんは少ない。中でも15回出産して育っているのが3人という家族もいる。
薬品も金も不足しがちな状態の中、胎児と生まれてくる赤ん坊の命を助けるために身を粉にして働く修道女達の仕事の実情を生き生きと克明に描いている。
もう一人重要な登場人物小木曽悠はマダガスカルに赴任して住む商社マンである。彼は茜の亡き姉の元婚約者で、度々彼女のところにやってきては、シスターの仕事に疑問を投げかけたり、さりげない支援をしている。
しかし彼は、修道女たちは神様から授かった命をどんなことがあっても守ろうと必死になっている活動に、様々な疑問を投げかけている。
彼の疑問は私達日本人にとっては常識である。避妊の知識もなく毎年毎年妊娠しては育てられないお母さんたちへのお世話や生きながらえられぬ乳児のお世話を神様から預かった命と愛しんで受け入れる修道女たち。
私はミッションスクールで育ったカトリック信徒であり、ネパールで頑張るノートルダム教育女子修道会のシスターたちを少し知っているので、十字架の宣教会のシスターたちの生活や尊いお仕事を察することが出来たのではあるけれど、私自身信仰の薄い俗人なので、ムッシュー小木曽の気持ちもよく理解できて大変興味深く読んだ。
しかしカトリックの女子修道会をご存知ない方にとってこの本は理解されるんだろうかと心配にもなった。