バードケージ

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バードケージ
「バードケージ」清水義範著
久々に図書館で本を借りてきました。
久しぶりに清水義範のユーモア又はミステリーのようなものが読みたくて、「バードケージ」という題と、初っ端からの事件<さえない浪人生の遥祐がぼんやり電車を待っていたところ、横にいた1人の初老の男が鉄道自殺をしようとホームから転げ落ちる。遥祐はとっさに軌道に飛び降り彼を助ける>という導入と、ネパールという章があるので借りました。
題材としてはとても面白くなる可能性は充分あると思うのですが、ここまで面白くない本とは、思いもかけませんでした。
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命を救われた男というのは、家族のためにと思ってお金稼ぎに精を出し金持ちになるが、気がつくと妻は逃げ出し娘はそんな父を嫌って自殺をする。すっかりやる気を失って自殺を決意して列車に飛び込むが青年に救われる。
男は遥祐に命を助けてもらったお礼に、彼に1億円をあげるから3ヶ月の間に有効に使ってほしいという課題を遥祐に投げかける。遥祐はなんとオイシイ話とその話にのる。ただお金を使うには条件がある。?楽しく使うこと?他言してはいけない?3ヶ月で使い切る?自分のために使い、寄付や募金に使ってはいけない。?稼ぐために使ってはいけない?週1回話を聞かせる  というのである。
それでまず豪華マンションに下宿をし贅沢な家具を購入、身の回りのファッションに身を包む、グルメな外食、などするのだけれど、なかなかお金が減らない。その辺の苦労話が続き、ある時ひょんなことからネパールに行く機会が起こる。ネパールの貧しさに開眼した彼は、学校を建設するNGOを作るという計画を引き出す。
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という話です。
1億円をリスクなしで使えるというのが陳腐な夢物語の設定ですが、ネパールで学校を作るNGOについてや、ネパールの教育の貧しさなどは良く調べてあり真実が述べられています。そこのところは許そう。
しかしどうしてこうも面白くないのか、、、と呆れながら裏表紙をみると、NHKの「新基礎英語」に2002年4月から2004年3月まで連載されたものに加筆修正したものですと、書いてありました。NHK出版。
基礎英語の教科書に載る連載に日本語の物語が書かれるものだろうか?どこにも翻訳ということがかかれていないしなあ、、。
面白くない理由が分かったような、、、。

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羅生門

「羅生門」 芥川龍之介 著
孫の夏休み宿題が[芥川龍之介の「羅生門」を読んでレポートを書く]というのに誘発されて私も読んでみました。
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時は平安京のころ。京の町はボロボロに荒れていて、職を失った1人の下人があてもなく羅生門にやってくる。このままでは餓死するだけだ。生きるためには盗人になるしかないが、その勇気がない。雨が降り始め雨宿りのつもりで、楼閣に上ったところ、1人の老婆が死人から髪の毛を盗んでいた。何と言うあさましいことと、老婆を切り捨てようとしたところ、老婆は生きるためにはいかし仕方ないことと、命乞いする。下人はそれもそうだと納得し生きるために盗人になる勇気が起こり、老婆の着物を剥ぎ取り去ってゆく。
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芥川龍之介は今昔物語集から題材をもらったと聞いていたので、「今昔物語集の世界」小峯和明著も合わせて読んでみました。平安京の庶民の生活がリアルにわかり、さらに面白く読めました。
羅生門は現存していないのですが、京都文化博物館にあるという模型の写真や、「今昔物語集の世界」に載っていた平安京の地図を見ながら読むとますます人々の生活をイメージでき楽しみました。
芥川龍之介は大正4年に書いていますが、今昔物語集が書かれた時代に、髪の毛か着物かどちらが高く売れたものでしょうか?現代では餓死しないために着物を売る髪の毛を売るという思考は通用しないでしょうね。餓死しないためではなく小遣いを得たいために着物を売り髪の毛を売るという人はいますが。
著者は着物か髪の毛かと言う問題より、生きるためには悪行をしていいものだろうか?という問題提議をしたと思われるのですが、孫が髪の毛と着物にこだわるので、私もつられてネットで調べたりしてけっこうのめり込みました。
ちなみにネットで、髪の毛を70センチ3万円で売買という記事や、2004年中国の業者が髪の毛を醤油の原料につかって衛生法に触れ摘発されたとかいう記事もあり、新しい知識を得て面白かったです。

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マルガリータ

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「マルガリータ」村木嵐 著 
クアトロ・ラガッティでもとりあげた天正少年使節、遣欧少年4人のうち、いち早く棄教した千路和ミゲルについてのお話です。
4人の使節少年は12歳のころ派遣され華々しくヨーロッパで迎えられ多くの文化を吸収して8年のあと日本に戻ると時代は信長から秀吉に変わりキリスト教迫害のまっさだなかに帰国することになる。
4人のうち3人はキリスト教を捨てず布教に力を尽くし2人は病死、中浦ジュリアンは逆さ吊りの刑をうけ殉教する。棄教した千路和ミゲルだけは遺された史実はなく、「マルガリータ」はミゲルの苦しみを想像して書かれた小説です。
私がもしその時代に生まれキリスト教信者であったなら絶対すぐに棄教して殉教はしないと思うのでミゲルの生涯には非常に関心がありました。
フィクションではあるが背景にある史実の裏付けのうえに書かれていて、もうこれが真実だとほとんど信じ込んでいる。
棄教した多くのキリシタンがキリシタンを迫害する側になることも多い中、ミゲルはキリシタンからは裏切り者あつかいにされ、幕府からもやっかいものあつかいされながら、心の中では信仰を守りいつも3人のことを案じ、3人も棄教したミゲルのことを信じ続けていた。
江戸川乱歩賞を受賞し新聞紙上でも絶賛されていただけあって、本当に清らかで泣ける良い本だった。
クアトロラガッティは、何人もの人に殆ど強制的にちかく薦めたが、話にのって読んでくれた人には、またまたマルガリータを勧めたい。

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猫を抱いて象と泳ぐ

「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子著
久しぶりの小川洋子です。
以前から気になっていた「猫を抱いて象と泳ぐ」を読みました。
今回の小川洋子ワールドはチェスの世界。
「博士の愛した数式」では数字の不思議、数式の美しさを、少年と数学博士との友情のなかに編みこまれた絶品でしたが、今度は、チェスゲームの展開を、唇が閉じたまま生まれたというハンディをもつ少年により、大海の水面にゆったり揺らぐメロディを奏でるように棋譜の美しさが描かれ、読者はチェスの世界に引き込まれます。
その世界は紛れもなく小川洋子ワールドで、とても自然なのに現実には在りえないシュールの世界が魅惑的に広がります。
著者の描く訳ありの少年少女達は、どうしてこうも無垢で魅力があるのか!
どの著作を読んでも心が洗われます。
そこが村上春樹のえがくシュールの世界と違います。
ずっと忙しい毎日が続く中で久々に現実から離れた静寂な世界で遊ばせてもらえました。

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聞いて、ヴァイオリンの詩

viorin.jpg「聞いて、ヴァイオリンの詩」 千住真理子著
音楽の本の紹介が続きます。
とうとう義姉は帰らぬ人となってしまいました。
口数は少ない方で、会うとたいていは私が一方的にしゃべっていたので、彼女のことはあまり分からないままお別れになってしまいました。でも音楽に対して憧憬が深いことだけは知っていました。
先月病状がすすみお見舞いに行った時、書棚に、ひのまどかさん著の音楽の本が並んでいたことは「星の国のアリア」を私の本棚で紹介した時書きました。
今回、主がいなくなった部屋を片付けていたらベッドルームに千住真理子著「聞いて、ヴァイオリンの詩」を見つけ記念にもらって帰り読みました。
千住真理子さんは、2歳のときからヴァイオリンに親しみ天才少女と言われ、数々の賞もとっておられましたが音大には進学せず、慶応幼稚舎から大学まで慶応1本で育った天才ヴァイオリ二ストということ、兄妹3人とも芸術家ということは知っていました。
でも、恵まれたお家柄で恵まれた才能でといったことに偏見を持ち、あまり興味を惹かれませんでした。
ところがこの本を読んで千住真理子さんの生き方に深く引き付けられました。
先入観や偏見は心を狭くし素晴らしい真実を見落としてしまうのだなあと思い知らされました。
彼女は慶応大学の哲学科で学び、卒論を「音楽・その方法―方法論の分析による演奏の可能性」という題を掲げ勉強されました。
卒業後、音楽家として生きようと決心され、プロのヴァイオリン奏者としてそれはそれは血の出る努力をしながら、<技巧を超えた音楽、人々の心に響く音楽、ヴァイオリンが醸し出す心の詩(うた)>を、1人でも多くの人に伝える喜びを感じたいと願って一途に音楽活動を続けておられるのです。
彼女のCDを買って、<彼女のヴァイオリン(ストラディヴァリウス!)が奏でる詩>に耳を傾けてみたいと思いました。
義姉は読み終わったのか、読もうとして買ったままだったのか分かりません。
でもこの本を読むと、「そうなのよ。私もそう思うのよ。」という義姉のきれいな声が聞こえてくるようです。
同じ本を読んで同じ感動を得るとき、お互いの心の距離がぐっと近くなります。
義姉は私に大きなプレゼントを遺して逝きました。

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バーンスタイン

music.jpg「バーンスタイン」愛をわかちあおう ひのまどか著
ミュージカル「ウエストサイド物語」を、私の世代の人では知らない人はいないと思います。
作曲がレナード・バーンスタインによることを知る人は少しへり、バーンスタインが天才的な名指揮者であり名作曲家であり名ピアニストであったことを知る人は、さらに少ないのではないでしょうか?
と、自分の常識に合わせて発言するのもなんだと思いますが、私はウエストサイド物語がバーンスタイン作曲によることを知っていましたが、この本を読むまで、彼がどんなに偉大な音楽家であったのか知りませんでした。
ウエストサイド物語の舞台はニューヨークの下町ウエストサイドで、そこで繰り広げられる白人とプエルトリコ人の縄張り争いの中に生まれたロミオとジュリエットのような悲恋がテーマです。
ブロードウェイでの初演(1954年)を喝采のうちに終え翌日のニューヨークタイムズでは
「このミュージカルは大都会が持つ緊迫感、不安、けばけばしさが感じ取れる。バーンスタインの音楽は強烈なリズムと不安で息が詰まるようなメロディから、美しい詩情に溢れる歌まで幅広く、極めて印象的である。舞台はスピード感と爆発するようなエネルギーに満ちている。これはドラマと音楽とダンスと舞台の全てが見事に溶け合い一体となったものであり、アメリカのミュージカル史を変える画期的な作品である。・・・云々」(本文147ページから抜粋)
と絶賛されたそうです。
その後1961年、ジョージ・チャキリスとナタリー・ウッドの主演で映画化され、多感なお年頃だった私は、もう夢見るごとく夢中になり4回も映画館に足を運んだのです。
なんと著者のひのまどかさんは、1964年ブロードウェイが総勢49人のキャストを引き連れて初来日した時、オーケストラの一員として、日生劇場でウエストサイドを弾いておられたという!凄い!
とりたててクラシック音楽ファンでない人々をここまで引き込むのは、バーンスタインの音楽には彼の類まれな音楽的才能のベースに、彼の生き様が深く反映されていて、どんな境遇の人の心にも響くものがあるのではないかと思います。
この本を読んで、ウエストサイド物語は彼の持つ音楽のごく1部分であることが分かりました。
もっと彼の作品や彼が指揮する交響曲に耳を傾け彼からのメッセージを受けたいと思いました。

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アフガンとの約束

アフガン.JPGアフガンとの約束 中村哲・澤地久枝(聞き手)対話集 副題・人は愛するに足り、真心は信ずるに足る
今日17日アフガン旅客機(40人乗り)墜落のニュースが飛び込んできた。外国人乗客がいる模様とのこと。
まさか中村哲さんは乗っていらっしゃらないでしょうね。
1982年以来26年に渡りアフガニスタンで活動を続けておられる中村哲医師を心底から尊敬しています。
戦争にまつろう真摯なノンフィクション本を世に出しておられる澤地久枝さんも同じお気持ちで、今回澤地さんのたっての願いで始まったこの対話集が版行されました。
澤地さんは、「なんとか中村医師のお役に立ちたい」と考え、師のことを紹介する本を作って多くの人が中村医師の事業に目を向けるきっかけを作りたいと思われたとのことです。
澤地さんの優しさから巧みに引きだされる真剣で真面目な誘いかけに、中村医師はこれまで語らなかった心の根底にある思いを静かに話され、読者は本書のいたるところで深くて鋭い箴言に出会うことになる。
日本社会に欠けていることは何なのか?何故中村医師は人生の大半をアフガンの活動に捧げられたのか?
中村哲医師の活動を知っている人も知らない人も是非読んで欲しい1冊です。
あ、医師のことをご存じない方は、先に中村哲医師の著作、例えば「ダラエ・ヌールへの道―アフガン難民とともに」などを読まれてからの方がいいかも。

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星の国のアリア

aria.jpg  星の国のアリア ひのまどか著
よそのお宅にお伺いしたとき書棚があると覗き見するのが好きです。
並べられた本を見ると持ち主の心の中が見えるようで興味深いのです。
先日義姉の所に行ったら本棚にひのまどかさんの音楽の本(主にクラシック音楽作曲者の自伝小説)がずらりと並んでいるので、「ああ、音楽好きの義姉だからなあ」と思いながら「ひのまどかさんが好きなの?」と訊ねてみると、「ひのまどかさんは私の従姉妹なの」という返事。中でも「星の国のアリア」が面白かったと薦められました。
義姉はコーラスの趣味一筋で生きてきた人なのでオペラの本は面白いかもしれないけれど、私はオペラはどうも苦手だし、、と思ったのですが、せっかくの義姉の薦めだからと読み始めたら面白くてぐいぐい引き込まれました。
興味のない分野の話に読者をここまで引き込ませるのは、ひのまどかさんの文筆が巧みで、時代背景が実に丁寧に分かりやすくえがかれているからではないかと思いました。また著者も芸大で音楽を学ばれ音楽の知識が豊かにあるうえ、音楽表現には欠かせない心情をも深く捉えておられるのが凄いなあと思いました。
さて、「星の国のアリア」は、1905年、リムスキー・コルサコフがロシアでの「血の日曜日事件」と呼ばれる大虐殺のあと一気に書き上げたというオペラ<金鶏>にまつわる物語です。
このオペラは絶賛されたのにかかわらず、独裁者への批判が込められているということで、上演禁止となった幻のオペラでした。
当時スターリンの独裁のもと、それに反発する芸術家は次々と弾圧され抹殺されていた時代で、多くの芸術家は外国に亡命したのですが、その中にロシアで有名だった女性オペラ歌手リーナ・ニコラーエヴナがいました。
リーナは夫と幼い息子の家族3人で日本の音大に招かれ亡命するつもりでしたが、出国直前に夫が急死し母子2人で日本に亡命するはめになり、東京音楽大学に勤めます。1933年のことでした。
やがて息子が結婚し女の子百合が産まれますが、それからリーナは、百合に将来ロシアのボリショイ劇場でオペラ金鶏のプリマ・ドンナとなる夢を密かに託し、オペラ歌手になるように教育するのです。
すくすくと美しく素直に育った百合は東京芸大に進学しオペラ歌手に成長します。
ロシアでは1985年ゴルバチョフのペストロイカ以来言論の自由が認められ幻のオペラ金鶏の復活が実現したのです。
その時ソビエトに留学し音大の大学院生だった百合はオーディションに合格し、ボリショイ劇場で開催される金鶏の復活公演で主役を歌うソプラノ歌手に抜擢されたのです。
という、サクセスストーリーと言えるかもしれませんが、私は声楽については初めて知ることが多く、驚きと感動に満たされながら読みました。
オペラ金鶏を観てみたいとつくづく思わされました。

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安楽病棟

anraku.jpg安楽病棟 帚木蓬生著
色々な症状の老人が暮らす認知症病棟での出来事を、理想の介護を実践する新看護婦城野の生き生きとした言葉で綴られているミステリー小説。
ミステリーと言っても最後のほうまでミステリーとは分からない。
認知症患者さんの日常が、詳細に患者さんへの愛と理解で溢れる語りで話はすすむ。
30章からなり、最初の10章では10人の患者さんの生い立ちと施設に入所するようになったいきさつが紹介される。
後の20章は、施設での患者さんの起床の介護から始まり入浴や排尿誘導や当直、四季折々の行事が大変だけれど楽しく語りすすめられるが、担当医との関わりが折り込まれ、だんだん本の題名が認知症病棟でなく、何故安楽病棟となっているのかが分かってきてこの辺からミステリーめいてくる。
常に患者さんをかけがえのない人間として見ている城野看護婦と、「週末期医療研究会」に属し、患者の問題を医療として答えを出そうとしている冷ややかな香月医師。
精神科医でもある著者帚木蓬生の優しい目線を感じさせてくれ、深い問題をかかえてはいるものの、情感溢れる看護婦の言葉が自然に胸に響き、介護するって時にはなかなか楽しいのかもしれないと思わされた。
両親をすでに見送った私にとって、安楽病棟は自分の問題として考えさせられた。介護されるのは辛く苦しいと思っていたけれど、城野看護婦のような人がいるのなら喜んで入所するだろうと思った。

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聖灰の暗号

seihai.JPG「聖灰の暗号」(上下) 帚木蓬生 著
13世紀のこと。南フランスのアリエージュ県トゥルーズ地方に起こったキリスト教宗派カタリ派がローマカトリック派から異端とされパコー大司教の指揮のもとで撲滅をめざし大虐殺が行われた。
その史実の報告はカトリック総本山のバチカンの倉庫に忌まわしいものとして今も隠されているらしい。
この本は、日本人の若い歴史研究者の須貝彰がトゥルーズ市立図書館で古い2枚の羊皮紙を偶然発見したことから始まる。
それはカタリ派大虐殺を、弾圧された側から記した中世の貴重な資料だった。
須貝はパリの学会で発表しセンセーションを引き起こし、発表後に不可解な事件が次々と起こる。
羊皮紙に記された迫害の様子は当時パコー大司教とカタリ派の聖職者の通訳をしたドミニコ会修道士レイモン・マルティの手稿によるもので、彼は大司教の言いつけで事実を隠した報告書をローマに送る。納得いかない彼は羊皮紙に事実を書いて隠したのである。最終的に彼も異端者として火焙りの刑をうけ殉教する。
手稿は作者によるフィクションだが、そのような大虐殺の史実は存在する。
日本でも、キリスト教迫害の史実があった。日本の場合は宗教闘争ではなく施政者側からのキリシタン迫害であった。いずれも宗教の名を隠れ蓑にした権力者からの殺戮である。筆舌に尽くしがたい犠牲のうえに成り立つ勝利ではあるけれど、いつの時代も殺される側は勝利を得る。
カタリ派の聖職者による言葉は、愛に満ち説得力がありそれはそれは美しく胸を打つ。代筆者(?)となって記した著者帚木蓬生のことが知りたい。

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