「聞いて、ヴァイオリンの詩」 千住真理子著
音楽の本の紹介が続きます。
とうとう義姉は帰らぬ人となってしまいました。
口数は少ない方で、会うとたいていは私が一方的にしゃべっていたので、彼女のことはあまり分からないままお別れになってしまいました。でも音楽に対して憧憬が深いことだけは知っていました。
先月病状がすすみお見舞いに行った時、書棚に、ひのまどかさん著の音楽の本が並んでいたことは「星の国のアリア」を私の本棚で紹介した時書きました。
今回、主がいなくなった部屋を片付けていたらベッドルームに千住真理子著「聞いて、ヴァイオリンの詩」を見つけ記念にもらって帰り読みました。
千住真理子さんは、2歳のときからヴァイオリンに親しみ天才少女と言われ、数々の賞もとっておられましたが音大には進学せず、慶応幼稚舎から大学まで慶応1本で育った天才ヴァイオリ二ストということ、兄妹3人とも芸術家ということは知っていました。
でも、恵まれたお家柄で恵まれた才能でといったことに偏見を持ち、あまり興味を惹かれませんでした。
ところがこの本を読んで千住真理子さんの生き方に深く引き付けられました。
先入観や偏見は心を狭くし素晴らしい真実を見落としてしまうのだなあと思い知らされました。
彼女は慶応大学の哲学科で学び、卒論を「音楽・その方法―方法論の分析による演奏の可能性」という題を掲げ勉強されました。
卒業後、音楽家として生きようと決心され、プロのヴァイオリン奏者としてそれはそれは血の出る努力をしながら、<技巧を超えた音楽、人々の心に響く音楽、ヴァイオリンが醸し出す心の詩(うた)>を、1人でも多くの人に伝える喜びを感じたいと願って一途に音楽活動を続けておられるのです。
彼女のCDを買って、<彼女のヴァイオリン(ストラディヴァリウス!)が奏でる詩>に耳を傾けてみたいと思いました。
義姉は読み終わったのか、読もうとして買ったままだったのか分かりません。
でもこの本を読むと、「そうなのよ。私もそう思うのよ。」という義姉のきれいな声が聞こえてくるようです。
同じ本を読んで同じ感動を得るとき、お互いの心の距離がぐっと近くなります。
義姉は私に大きなプレゼントを遺して逝きました。
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