「聖灰の暗号」(上下) 帚木蓬生 著
13世紀のこと。南フランスのアリエージュ県トゥルーズ地方に起こったキリスト教宗派カタリ派がローマカトリック派から異端とされパコー大司教の指揮のもとで撲滅をめざし大虐殺が行われた。
その史実の報告はカトリック総本山のバチカンの倉庫に忌まわしいものとして今も隠されているらしい。
この本は、日本人の若い歴史研究者の須貝彰がトゥルーズ市立図書館で古い2枚の羊皮紙を偶然発見したことから始まる。
それはカタリ派大虐殺を、弾圧された側から記した中世の貴重な資料だった。
須貝はパリの学会で発表しセンセーションを引き起こし、発表後に不可解な事件が次々と起こる。
羊皮紙に記された迫害の様子は当時パコー大司教とカタリ派の聖職者の通訳をしたドミニコ会修道士レイモン・マルティの手稿によるもので、彼は大司教の言いつけで事実を隠した報告書をローマに送る。納得いかない彼は羊皮紙に事実を書いて隠したのである。最終的に彼も異端者として火焙りの刑をうけ殉教する。
手稿は作者によるフィクションだが、そのような大虐殺の史実は存在する。
日本でも、キリスト教迫害の史実があった。日本の場合は宗教闘争ではなく施政者側からのキリシタン迫害であった。いずれも宗教の名を隠れ蓑にした権力者からの殺戮である。筆舌に尽くしがたい犠牲のうえに成り立つ勝利ではあるけれど、いつの時代も殺される側は勝利を得る。
カタリ派の聖職者による言葉は、愛に満ち説得力がありそれはそれは美しく胸を打つ。代筆者(?)となって記した著者帚木蓬生のことが知りたい。
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