「ペスト」アルベール・カミユ 著
日本中(世界も)、コロナ禍で規制され翻弄されている中、カミユの「ペスト」がよく話題に取り上げられているので読みました。
著者カミユによるペストという悪疫禍の記録本です。主人公に医師のリウ-を著者の語り部として置き話しを展開していきます。
この記録の主題となす奇異な事件は、194*年、オラン(アルジェリア海岸における仏の植民地)に起こった悪疫のことです。
オランは取り立てて特徴もないごくごく普通の地方都市でした。でもある朝、一連の重大事件の最初の兆候というべきものが起こりました。医師のリューが鼠の死体をいくつか発見したのです。みるみるうちに鼠の大群。ついで原因不明の熱病者が続出、それが悪疫ペスト発生の始まりでした。
これまでごくごく普通に暮らしていた家族、友人、賑やかな商店と町並み、お役所、病院、教会が、右往左往対処に翻弄されていきます。
話の進展は、現在日本が否世界中が去年12月以来翻弄され続けている新型コロナによる悪疫の辿る道筋と同じと言っていいでしょう。
ペスト感染禍から70年以上も経ち、時代が代わり医学も進みグローバル化が進む社会になりましたが、世界中に感染者が増え、感染者は外部と遮断され、人はみな外出自粛、孤立状態のなかで、オロオロと「悪疫」と闘う市民たちの姿は、スケールは違うもののペスト禍の人たちと変わりありません。
過去の感染禍を教訓として将来に備える必要性がおろそかにされてきたと思います。
次々起こる自然災害(今現に鹿児島熊本が被っている大雨)に対しても、国は過去に学ぶ防災の手があったはずです。
この「ペスト」の話では、周りの親しい人たちが次々感染していく不安、人間内部に潜む悪徳や弱さや、あるいは貧苦、戦争、全体主義などの政治悪の象徴までもが記録され、これは単に昔の悪疫だと読み流すことは出来ないと思いました。
新聞紙上やテレビで「ペスト」のことが話題になったことの意味が分かりました。
読んでよかったし読むべき本でした。