大人の流儀7「さようならの力」 伊集院静 著
これぞ「あなたに読ませたい」という本に遭遇しました。
前に紹介した正岡子規と夏目漱石のことを書いた「ノボさん」がとても面白かったので、彼の小説を読みたいと思いながら、小説でなくエッセイ集を手にしました。
4章からなり、1章は「さよならは言わなかった。」2章は「悲しみは、いつか消える。」3章は「どこかで遭ったら。」4章は「去りゆくもの。」です。
項目からみると、とても真面目なお話のような感じですが、全然暗くない。大変深い心に響く話が簡潔にカラリとかかれている。ユーモアにも富んで。
伊集院さんは20代の時に高校生の弟さんを海難事故で喪い、30代の時には前妻の女優夏目雅子さんとの別離を体験されていちじは奈落に突き落とされた気持ちになられたことがありました。
けれどやがて別離を経験した人にしか見えない物が見えてくる!
4章の後に加えられた、若者たちに伝えるメッセージの一部を紹介しましょう。
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どうしたら大人になれるかって?
まずは家を出て、一人で風の中に立ちなさい。
そうして風にむかって歩き出すんだ。
歩きながら自分は何者かを問いなさい。
そうすれば君がまだ何者でもないことがわかる。
それでも一人で歩ことがはじまりなんだ。
上り坂と下り坂があれば、上り坂を歩くんだ。
甘い水と、苦い水があれば、苦い水を飲みなさい。
追い風と、向かい風なら、断然、向かい風を歩くんだ。
どうして辛い方を選ぶかって?
ラクな道、甘い水は君たちに何も与えてくれないし、
むかい風の中だけ他人の辛酸の声が聴こえるんだ。
真の大人というものは己だけのために生きないんだ。
誰かのためにベストをつくす人だ。
(2015年成人の日を迎えた若者へのメッセージを新聞で語った文の一部)
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4月から家を離れて東京で下宿をし大学生活を始める孫息子に聞かせたい。
蛇足:伊集院さんは大の愛犬家でバカ犬といってかわいがっている犬の名は「ノボ」といいます。