「神去なあなあ日常」 三浦しをん著 徳間文庫
人は、(大雑把に分けてですが、)「山派人間」か「海派人間」に分かれるんじゃないかなと思っています。
「海派人間」の人は、水が好き。海、湖、川、魚、かもめ、ラッコ・・・ など。「山派人間」は葉っぱが好き。山、樹林、草花、小鳥、ウサギに鹿・・・などが好き。
私は山人間です。山の中に小屋を作り年に何ヶ月か暮らすぐらい好きです。
日本の山は人手不足で見放され、荒れ放題となり、そのための災害も頻繁に起こり私も懸念していましたが、最近若者の間に林業が人気になって林業の専門学校が出来たことが今朝のテレビで放映されていました。
たまたま「神去なあなあ日常」を読み終わったときだったので驚き嬉しくなりました。
この学校を希望した若者は、きっと「神去なあなあ日常」を読んだのに違いないです。
そのぐらいに魅力溢れた本でした。
主人公は横浜の都会っ子。平野勇気。18歳。
学校の成績もよくないし、勉強も全然好きでないし、親も先生も「とりあえず大学だけには行っておけ」とも言わないし、フリータでもしながらだらだら過ごせばいいかなと思っていた。
ところが卒業式のあと担任の熊やん(熊谷先生)が「おう、平野。先生が就職先を決めてきてやったぞ」と言って親もそれ良いわと後押しされ、「ええっ?」と考える間もなく、携帯もつながらない神去村(かむさりむら)という山中の林業会社に送り込まれる羽目になりました。
そこには勇気がこれまで見たことのないとんでもない山村の人達の生活が有りました。そんな中で頼りない都会っ子の勇気が、もまれてだんだん山仕事に引かれていくという面白おかしい感動物の林業エンタテインメント小説です。
映画化もされました。勇気が染谷将太、人情あふれる強くて荒っぽい先輩に伊藤英明、憧れの人に長澤まさみで、顔をダブらせて読みました。
四季の移ろう美しい神去村の描写がお見事!神様の宿る神去山と神を祀る神事、マダニやヒルの襲来、恐ろしい山火事。
私も都会育ちなので勇気と同じ気持ちでハラハラドキドキと感動しながら読みました。