橋ものがたり

橋ものがたり
「橋ものがたり」 藤沢周平著  新潮文庫
藤沢周平の本は<ちょっと退屈>という先入観があって馴染みのある作家ではなかった。
ところが夫が橋梁の専門家だったので夫のために貸してくださったこの本を先に読み始めたところ、思いがけず面白くて、物語の清々しいトーンの心地よさにしびれてしまった。

様々な人が日毎行き交う江戸の橋を舞台に、10の短編集だが色々な人が演じる橋での出会いと別れ、市井の男女の喜怒哀楽の表情を瑞々しく描かれる世界にうっとりと引き込まれてしまった。

第一話「約束」の中での一部を書き写そう。
幸助は、萬年橋で5年前に遭うことを約束したお蝶をドキドキしながら待っている。約束の時間にはまだ間がある。幸助はこの5年で修業を終え独り立ち出来るようになった。お蝶は変わっただろうか、、、。
 ★ ★ ★
幸助は大川と小名木川が作っている 河岸の角に建つ、稲荷社の境内に入った。狭い境内に梅の老樹と、まだ丈の低い桜の木が2本あった。梅はもう葉をつけ、葉の間に小指の先のような実のふくらみを隠していたが、桜はまだ散り残った花びらを、点々と残している。境内にも、少しよどんだような、暖かい空気と日の光が溢れていた。
幸助は境内の端まで歩き、大川の川水がきらきらと日を弾いているのを眺め、その上を滑るように動いていく、舟の影を見送った。そこに石があったので腰をおろした。石は日に暖まっていて、腰をおろすと尻が暖かくなった。
 ★ ★ ★
どんどん約束の時間が過ぎていく。
  ★ ★ ★
幸助は、橋の欄干に頬杖をついて、川の水を眺めていた。水は絶え間なく音を立て、月の光を弾いている。日が沈むと、あたりは一度、とっぷりと闇に包まれたが、間もなく気味が悪いほど、赤く大きい月が空にのぼった。
  ★ ★ ★
さてさて幸助とお蝶の運命は、、、?気になる方は本を読んでください。期待を裏切らないです。

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