蟻の街の微笑み

arinomati【蟻の街の微笑み】パウロ・グリン著 大和幸子編 聖母の騎士出版
(蟻の街で生きたマリア北原怜子)
著者のパウロ・グリンは1928年オーストラリア生まれのカトリック司祭です。1955年から21年間日本で司祭職を続け現在はシドニーで執筆活動と黙想指導に関わっておられます。これまでに著書「長崎の鐘」や「和解」などが多数翻訳されていますが、翻訳のお手伝いをされているのが聖心女子大学と小林聖心女学院卒業生のグループの皆さんです。原書および翻訳書から得られた収益は、貧しい人々、困難な生活を強いられている人々に贈られます。

この度、翻訳と編集に携われた大和幸子さんがいつもラリグランスクラブを応援してくださっていることから売上に協力するつもりで買いました。

蟻の街のこと、北原怜子さんのことやゼノ修道士、コルベ神父のことなどよく知っていた(知っていると思っていた)ので、記憶を辿る感じで読み始めたのですが、私の記憶など全く無きに等しかったことがわかり、己の無知と知ったかぶりの奢りに気付かされました。カトリック教皇ヨハネ23世が「歴史を知らない人は記憶を持たない人のようだ」とおっしゃったそうですが実感した次第です。
本棚ブログで紹介したキャパやゲルダの時代、第一次世界大戦でのポーランドの悲劇、ヒットラー独裁政権の問題、にほんでは関東大震災、日清戦争と第二次世界大戦、大空襲に原爆。それらのことが無意識に北原怜子のモチベーションに深く関わっていることを、ポウロ・グリン神父は巧みに知らせてくれます。そのことは「お嬢様から東京山谷(墨田公園)のスラム街に身を捧げた偉人の伝記」とは、決して一言で片付けられない深い洞察があり驚かされました。

最初、墨田公園に訪れた北原怜子に発せられた言葉
【そう、あなたのような金持ちの若い婦人や立派な服を着た修道女がやってきては、お小遣いのあまりを恵んで歩いている。これがキリスト教の慈善なのです。・・(中略)・・不要品を貧しい人々に与えて、自分の低俗な良心を満足させているのです。それで貧しい人々を助けてやったと自己満足しているのです。・・】
その言葉を深く受け止めた怜子は裕福な家から出て蟻の街に住み結核を発症しながらも、地域の人々と共に廃品回収という仕事を精力的に働き29歳の生涯を終えたのでした。
私がラリグランスクラブでネパール支援活動をする中で、上記の抜粋箇所は常に痛く心に響くことであり気を引き締められました。
ラリグランスクラブを応援してくださる方々にも是非読んでもらいたいと6冊も買っちゃいました。

購入申し込み 聖母の騎士社 Tel 095-824-2080  Fax 095-823-5340
       1620円(税含む) 送料:無料

(表紙のカバー写真は<日本の女性報道写真第一号>の笹本恒子さんによる写真です。)

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