「いつも僕のなかは光 梯剛之」 角川書店
盲目の天才ピアニストと呼ばれる梯剛之さんのピアノリサイタルに行きました。
生まれて初めて耳にすると言っていい澄み切った音、流れるようにかもし出される心地よい響き。
オールショパンのすばらしいプログラムでした。
CDと彼の半生記「いつも僕のなかは光」の本を買ってかえりました。
CDを聴きながら一気に読みました。
ラリグランスのホームページにも書いていますが、今視覚障害者の方たちのことを深く知りたいと思い続けていますので、どんどん心に響き、いろんな知らなかったことに目が開かされました。
そう、この目が開いたというのは、心の目というか、脳内にある目というか、つまり盲目の方が見ておられる目と同じ目なのです。
私の中には、盲目の方は暗闇の世界の中で懸命に生きておられるという先入観がありましたが、確かに目が見えるものにとっては見えないということは真っ暗闇と思うのですが、それはどうも違うことが分かりました。
盲目の方は、私たちの見える世界を超えた情景の中でいろんなことを見ながら生活しておられるのです。
その情景の中には光や影があり、風でそよぐ柳の木や樫の木があり、可愛い動物や虫や蝶が舞っているのです。
盲目の方を不憫に思うのは間違っていました。この世では少数派ですからご苦労も多いのですが素晴らしい世界を持っておられることが分かりました。自然界の美しさを一緒に共有出来るんだ、共有したいと思いました。
ピアニストは、まず楽譜を見て弾くことから始まりますが、その読み取り方法が見える人と見えない人とで違うだけです。旋律がわかった後のテクニックは、見える人と見えない人とでは違いがないのです。
梯さんは、ピアニストとして大変な努力をされますが、それはピアニストを目指す人はみな同じとも言えます。
目が見える人は、つい楽譜に頼ったり鍵盤を見て弾きますが、それでは優れたピアニストにはなれないでしょう。
盲目の方と見える人は同じ人間です。恥ずかしいことにそんな分かりきったことがこの本を読むまで自分は理解していなかったと認めなくてはなりません。それは私だけではなく多くの人がその過ちをしていると思います。だから梯少年は無理解な人々に出会って多くの苦労もされています。でもそれ以上の多くの理解ある人々に支えられ癌と闘いながらも、美しい音楽を求めまっすぐに歩み続ける梯剛之さん。
この本を梯さんを応援するためだけでなく全ての視覚障害者の方たちのためにも読んでほしいと思います。
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