「悪人」(上下) 吉田修一著
映画化もされている話題の「悪人」を読んだ。
九州地方に珍しく雪の降ったある夜。幽霊が出るとの噂のある福岡と佐賀にまたがる背振山の三瀬峠で保険会社に勤める石橋佳乃が殺されているのが発見される。
彼女には携帯出会い系サイトで知り合った複数の男がいてその中の1人清水祐一と、裕福なお坊ちゃん大学生の片思いの増尾圭吾が容疑者に挙がる。
佳乃と祐一と圭吾の生活背景、彼らを取り巻く人々の生活を取り混ぜながら真相を追う話が展開する。
そして殺人犯は祐一であることが確定するが、祐一はこれまたサイトで知り合った女性馬込光代との逃避行をはじめる。
世間では祐一が光代を人質にして逃げ回っているように報道しているが、事実はお互いこれまで満たされない寂しい人生だったのを理解しあって、当てのない逃亡生活に生きがいを感じるのでした。
でも結局最後は逃げ切れずつかまった祐一は、自分を「悪人」と宣言し、光代は解放され日常の生活に戻っていく。
・ ・・・・・・・・・・
<本文より>
でも、あんな逃げまわっとるだけの毎日が、、、あんな灯台の小屋で怯えとるだけの毎日が、、、二人で凍えとっただけの毎日が、未だに懐かしかとですよ。ほんと馬鹿みたいに、思い出すだけで苦しかとですよ。
きっと私だけが舞い上がっとったんです。
<中略>
あの人は悪人やったんですよね?その悪人を、私が勝手に好きになってしもうただけなんです。ねえ?そうなんですよね?
・・・・・・・・・・・・・・
という光代のせりふで物語りは終わる。
なんだかやるせない希望のない暗い小説です。登場人物は全て人生にツイてない寂しい人ばっかり。寂しさを紛らわせる手段がやるせない。出会い系サイトで満たされぬ思いが癒されるものなのか?
この本が話題になり関心を呼んでいるということは、人生に生きがいを感じられない寂しい人が増えているんだろう。
考えさせられたけれど感動は出来ない本でしたねぇ。
映画は見ようかな。妻夫木聡がどんな演技をするのか興味があるし、懐かしい九州の地、博多弁も聞きたい。私は舞台になった佐賀・福岡に9年住んでいたので。
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私も読みました、その本。深津絵里さんがこの映画でモントリオール映画祭最優秀女優賞に輝いたというニュースを聞き、また主演の妻夫木聡君が自分で映画化を希望したというので、いつものように取り寄せちゃいました。はい、ミーハーな私です。
吉田修一という作家は今まで知らなかった人なんですけど、映画化のおかげで本もベストセラーになったのかなぁ・・・なんて思ってしまいました。
出会い系サイトには偏見を持っていたりもするので、小説のための絵空事のように思えてしまいました。breezeさんも「考えさせられたけれど感動は出来ない」と書いてらっしゃいますが、凶悪な犯罪の被害者になるような女性はその人自身が不幸を招いているようなところもあるんじゃないかという気もします。
自分を守る知恵もなく軽率に犯罪被害者になっていく人にはちょっと軽蔑の目を向けたりもするイヤな奴かも知れません。>私
michiko様
コメントをありがとうございます。
< 自分を守る知恵もなく軽率に犯罪被害者になっていく人にはちょっと軽蔑の目を向けたりもするイヤな奴かも知れません。>
私も同感です。私もまったくイヤな奴です。
でも私はもっとたちが悪い<軽蔑>より<憐憫>を感じてしまう悪人です。
悩みを尊敬する人や親しい人に相談したりして解決することを避け、手近なもので間に合わせる風潮がアカンのではないでしょうか?
ああ、相談する親しい人がいないんだということで可哀相?となるのです。