「旅のつばくろ」電子オリジナル版 沢木耕太郎著
沢木耕太郎は、著名なノンフィクション作家であり、エッセイストであり、バックパッカー旅の深夜特急シリーズ紀行文には魅了されていた。
でも、中でも一番印象に残っているのは「凍」というヒマラヤのギャチュンカン北壁(7985m)に挑む登山家の山野井泰史、妙子夫妻の登攀ノンフィクション小説だった。これは、この私の本棚ブログの2010年2月4日に紹介しています。
沢木さんはこれといった登山経験がないのに、手に汗握る息もつかせない登攀の状態を、夫妻を何十回も訪ね何時間ものインタビュウからこのノンフィクション小説を書かれたということを知った時の驚愕が忘れられません。
沢木さんが外国には足繁く行ったが自国日本をめぐる旅をしたいと思われて2020年4月に発行された41編の旅を綴った本です。
東北から始まるどの編も大変面白く興味深い旅ですが、驚いたことにはその中の1編に「近くても遠いところ」という編があり、東京近郊の奥多摩湖のことでした。そこには山野井夫妻が住まわれているところでした。
・・・奥多摩湖は、私がギャチュンカンの話を聞くために何十回も訪ねた場所だった。今住んでいる世田谷から行くには直線距離で行くと短いが何度も乗り越え優に3時間半はかかり往復7時間はかかるもう一つの実に長い旅・・・
「近くても遠いところ」、ではご夫妻の今の生活については具体的に書かれていないのだけれど、ご夫妻の純な気持ちが匂い立つような、人里外れた奥多摩周辺の情景が素敵な筆跡で書かれています。
「凍」を読んでから10年たち、誰かのヒマラヤ登攀ニュースをきくと、手足凍傷でなくしている山野井夫妻は今はどうしてられるのか時々思い出したりしていました。
「深夜特急3」でネパール・インドの旅が出版されていることを知り早速注文した。
そのうちに紹介します。
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