「かこさとし」別冊太陽 日本のこころ248 子どもと遊び、子どもに学ぶ
加古里子(1926~2018)絵本作家 工学博士 その他 の 生涯の記録です。
かこさとしは陸軍士官学校を目指す、疑いもなくはっきりした軍国少年でしたが、目が悪く体も弱く戦地に赴くことはなく軍需工場で昼夜働いていました。戦況はますます悪化し家屋は空襲で全焼、8月の玉音放送にはもう敗戦の衝撃はなくなってしまいました。
負けた途端民主主義に鞍替えした大人には幻滅し、出征を強いられた友人は皆戦死し、一人生き残った自分はこれからどう生きていくのか苦しみました。
1年ほどして掴んだ答えは
「死んだ仲間のぶんまで生きて、軍人を志した自らの過ちを償うために残りの人生を捧げる」という強い決心を持ったことです。92歳で亡くなるまでその決意はゆるぎもしませんでした。
戦後東京大学工学部に戻り工学博士になり卒業後は昭和電工に47歳まで働きます。
大学では「東大セツルメントクラブや演劇部に所属し、演劇や紙芝居、童話などでセツルメント活動し、会社人となっても、休日と余暇のすべてを子ども達のために使う日々でした。
子どもたちに戦争の過ちを教え、平和の世界を共に作ることを願って92歳で亡くなるまで発信を続けたのです。
【セツルメント:ドイツに始まった、社会から差別され虐げられた人々のために無償で働く活動】
彼の作品の全てにその願いが込められているのが分かります。
絵本で人気になったのは「だるまちゃんとてんぐちゃん」のシリーズでだるまちゃん家族がてんぐちゃん家族と楽しく平和に暮らす日常を描いた絵本です。昭和45年前後、5~6歳だった息子たちと一番楽しく読んだ絵本は「トコちゃんはどこ?」です。すぐどこかへトコトコ駆け出すトコちゃんを探す絵本はお気に入りで、今も私の本棚にあります。
久しぶりに取り出してみますと、松岡享子作で絵がかこさとしでした。
トコちゃんはお母さんお父さん或る時はおばあちゃんと出かけてトコトコ駆け出していき、どこにいるのかを探す絵本です。或る時は市場、或る時は動物園、海水浴、お祭り、デパートと見開きいっぱいに賑やかな場所の様子と集まった人々が描かれているのです。見開きいっぱいに100人はくだらない子どもたちと大人。動物園ときたら見開き2枚に渡って動物たちと人々。みんな心から楽しんでいるのが笑顔と仕草で分かります。
童話絵本のほか、子どもたちが何度も読んだのは科学絵本シリーズです。「川」「山」「台風」「ダム」「太陽」などなど、美しい自然自然開発の事実を科学的に詳しく説明しながら楽しく描かれています。
今さらながら気づいたのですが、加古さとしの本は、子どももですけれど、大人が感動する本だということです。
「宇宙」という科学絵本があることを知り読んでみます。