「海馬」(脳は疲れない) 池谷裕二と糸井重里 との 対話
東京大学大学院薬学系研究科教授で海馬や大脳皮質の可塑性の研究者である池谷裕二氏(1970年生)とコピーライター、エッセイストの糸井重里氏(1948年生)の対話集です。
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池谷:「最近物忘れがひどいんです。」という話をよく聞きます。「もうこの年齢だから、今更脳を鍛えるのも限りがありますよね」という声もよく聞きます。そんな事はないんです。その誤解を解くだけでもずいぶん違います。」
糸井:それはいい情報ですね。知りたいです。
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ということから話が始まり、人間が身につけていく記憶、知識を司るところが海馬であり、その海馬をどのように育てていけばいいかということが認知症にならないための鍵であることを、質問、応答(ちょっと難解なところもあり)を楽しく話し合われた対話集です。
老人になると脳は衰えていき回復できないけれど、海馬は鍛えれば育てることが出来るのだそうです。海馬の横には扁桃体があり、相互の連携は欠かせないとのことで、先日この本棚で紹介した「アーモンド」の話に扁桃体のことについて少し知っていたから納得も出来ました。
海馬は直径1センチ長さ5センチほどの小さいものだけれど、記憶や知識を溜める重要な機関なので脳の奥の大切なところにしまわれています。
記憶には勉強して記憶するものと体験から記憶することと2つあります。勉強の記憶は学校での授業や受験勉強とか言う形で海馬に溜られる。一方体験によるによる記憶も海馬に溜められるのですが、生きていくのには体験の記憶のほうが役に立つことは誰もが経験済みのことでしょう。
人生をボケないで豊かに過ごすには経験がものをいい、経験が「海馬」に記憶されていきます。質の良い体験は扁桃体とコミュニケーションをとりながら、快感を感じとり、「海馬」が活性化されていくという。それが海馬における可塑性(自力で変容出来る自発性)です。
喜びや楽しさを感じる体験を扁桃体と海馬が連絡し合いながら積み重ねていく知識は生涯衰えることはなく、脳は老化していくけれど海馬は活性させていければ認知症にはならないということだそうです。
「クイズ」や「数独」には正解がありますが、思いがけない発見は未知なる物への知識を生み出し物事の認知力を高め、脳を老化させないということです。海馬を活性化しないと認知症になるのです。
脳の3大神経物質といわれる・アドレナリン・ドーパミン・セロトニンも海馬の活性と同時に出てくるのです。
私は昨年夏までは、ラリグランスクラブの活動のためにネパールにも出かけ、運営資金調達のためバザーを開催し野山を歩き、元気に生活していましたが、思いがけず癌を患い抗がん剤後遺症で寝込み、やっと恢復の兆しが出てきたところにコロナ禍で家に籠もることを強いられてしまいました。海馬は弱まり知能、認知能力の低下は当然のことでした。
身体改善のために、①運動 ②栄養 ③ストレス解消 に励んできましたが、筋力はついてきたとの自覚があるのですが、③が上手くいかず、異常とも思える物忘れと気力、集中力の衰えが酷くなってきて不安になっていました。
でもこの本のおかげで、これからは積極的に身近なところでの発見体験を重ね日々楽しく暮らしていけば、海馬の活性化に繋がり、物忘れは改善されるらしいとの希望が持てた本でした。