「生きるとは、自分の物語をつくること」 小川洋子&河合隼雄 対談集
臨床心理学者の河合隼雄と小説家の小川洋子の対談集です。
この対談では河合さんが小川洋子さんの「博士の愛した数式」に感動されたと言う話から始まります。河合さんは数学者でもあり、数式の面白さや不思議さに合わせながら話が進んでいくところなどにとても心を動かされたということで、小川洋子が何を小説の基盤において創作されていくのか、などの話に広がり、深い会話で満たされています。
Ⅰ 魂のあるところ
・友情が生まれる時
・数字に導かれて
・永遠につながる時間
・子供の力
・ホラ話の効能
Ⅱ 生きるとは、自分の物語をつくること
・自分の物語の発見
・「偶然」に気づくこと
・黙っていられるかどうか
・箱庭を作る
・原罪と物語の誕生
・多神教の日本に生まれた「源氏物語」
・「死」への思い、「個」への執着
・「原罪」と「原恋」
・西欧一神教の人生観
・厳密さと曖昧さの共存
・忘れていたことが出てくる
・傍にいること
(Ⅲ)二人のルート—少し長すぎるあとがき 小川洋子
私は、河合さんの臨床心理学者としてのカウンセラーにまつわるエッセイ等には、いつも共感を覚えていました。彼はいつも弱い人の心に目線というかご自身の心を合わせ、苦しんでいる人の話しに耳をかたむけ、其の人の置かれた立場とか苦しみに共感し話しをじっと黙って聞いて、時々、そこはプロとしての相槌を、挟んだりしているうちに、相談者の心底に河合さんの気持ちが染み入り相談者の心が開かれていくのです。
小川洋子さんの小説はいくつか「私の本棚」にも紹介しましたが、「博士の愛した数式」は、80分しか記憶が持てない博士と家政婦さんと息子のルート君の愛と理解に溢れた温かいお話です。
彼女の作品には、私には思いもつかないストーリーが必ずあり、登場人物に潜んでいる深層心理がたくみに織り込まれ感動せられます。
「死」について「宗教」についても深い会話があり、傍で聞かせてもらっている感覚で感動を覚えました。
河合隼雄さんと小川洋子さんとは私の中では別々のジャンルの方と思っていたので、びっくりしました。
深い内容でもう3回も再読しました。