「幸福の軛(くびき)」清水義範著
清水義範のカラーからは少々異色に感じる社会派ミステリー。
主人公中原雅之は大学の教育学部の助教授を務めるかたわら、臨床心理学の知識をいかし教育カウンセラーとして社会的にも認められている。
<子どもの声なき悲鳴に耳をかたむける>をかかげ大学の研究室から離れて、自分の教育カウンセリング事務所を開くところから話ははじまる。
少年犯罪・イジメ・虐待の事件にかかわる中での、連続殺人事件。被害者を含む関係者の断片をつなぎ合わせるうち、あぶりだされてくる社会の暗部。
問題行動を起こす子どもの背景には、壊れた家族・壊れた社会がある。熱心なカウンセラーである中原自身の中にも潜む暗い深層心理もかぶせて事件が解き明かされていく。
最後に分かる意外な犯人。
著者の作品の中にいつも見え隠れする皮肉な社会の裏表が、ユーモアではカバーできない深刻な問題として浮かび上がります。
教育学出身の著者として、教育に対する問題意識をも提議する読み応えのあるミステリー小説でした。
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