私の息子はサルだった

「私の息子はサルだった」佐野洋子著
佐野洋子さんのエッセイはこの本棚にも何冊か紹介しましたが本当に素晴らしい。
言葉使いは乱暴で自分のことは自虐的に、周りのお友達のことなどには呆れたり小馬鹿にして書かれていることも多いのだけれど悪気は感じられず、正直で愛情がこもっていて読者は感動し、皆から愛され好かれていた佐野さんのことがよく分かる。
このエッセイは彼女が亡くなってから見つかった原稿だったという。息子さんの子育てを題材にしているのですが息子さんはかねてから自分が題材にされていることをすごく嫌がっていたから発表を遠慮されていたのかもしれない。
「あとがきのかわり」に息子さんの廣瀬弦さんが文章を寄せられています。
{僕の思い出に少しの大袈裟と嘘を好き勝手に散りばめている}{僕の知らない人が僕の知らない僕を知っている}のは恐ろしい。許せないと思っておられ、母親のエッセイもほとんど読まれなかったそうです。
この度残された遺稿を彼は初めて読み「全ての行にうっすらと大袈裟と嘘が見え隠れする。ほらな。やっぱりな。こういうのが嫌なんだよな」と。「まったく、そんなんじゃねえよ!」と憤慨させられたものの、「だけど何度か読んでいるうちに、「もしかしたら僕から観た大袈裟と嘘が、彼女の中では全て真実なのかもしれないと思い始めた。」そして深い愛情が伝わり「今では許せる」と言っておられた。

母親自身が気づかない程の深い愛情、子供の可愛い突拍子もないユーモアな行動に、佐野洋子の息子に対する絶大な愛を感じ抱腹絶倒、感動してしまった。

今、息子、孫息子育て中でこんなおサルみたいな子で大丈夫なのかしらと思っておられる方ぜひ読んでください。
私は息子も大人、孫息子も大学生になってしまったけれど、懐かしい思いでいっぱいになり楽しく読みました。

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