「コロナの時代の僕ら」パオラ・ジョルダーノ著 飯田亮介訳
世界は新型コロナウイルスの危機に陥っている。感染拡大は落ち着いてきているとのニュースも流れているが貧困層の多い途上国では感染予防の道は閉ざされた状態で、ウイルスは世界中に拡大してゆくと思われる。
著者のイタリヤ人物理学者であり小説家のパオロ・ジュリダーノは、新型コロナウイルス拡散のイタリヤで騒ぎを体験する中、これは全世界の人々に記憶されなければならないと、2月29日に書き始めたエッセイです。
「僕らが心配しなくてはいけない共同体とは、自分の暮らしている地区でもなければ町でもない。さらに州でもなければイタリヤでもなく、ヨーロッパですらない。感染症流行時の共同体といえば、それは人類全体のことだ」
これまで地球が体験してきた数あるクライシス、戦争、ウイルス感染、自然災害、は地球の一部であって全体を包むものでなく、記憶は徐々にうすれていくものであった。しかし今回の新型コロナウイルスはいっとき収束したかのようにみえても、しぶとく地球に生き続け人類滅亡に繋がることになるのではないか。それを食い止めるためには人間一人ひとり(政治家は勿論、一般の人々)の自覚が重要なポイントになると彼は警告している。
あとがきの「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」という9篇の叫びに全人類の人々が耳を傾けてほしいと願いました。
・僕は忘れたくない、今回のパンデミックのそもそもの原因が秘密の軍事実験ではなく、自然と環境に対する人間の危うい接し方、森林破壊、僕らの軽率な消費行動にあることを。
・僕は忘れたくない、ヨーロッパが出遅れたことを・・・・・
・僕は・・・・
このエッセイは2月29日から4月にかけて書かれた最新のものです。早川書房1300円。ぜひお手元に!