阿弥陀堂だより

阿弥陀堂だより 南木佳士著
心が静まり心があったかくなるいい本だった。
背景になる谷中村は7つの小さな集落からなる周囲を山に囲まれた過疎地である。
その地で親から見離され祖母に育てられた上田孝夫は、再婚して東京に住む父親の元に、高校から勉学のため行く。その頃学園紛争が起こりそれについていけない孝夫は同じ思いを抱いていた同級生の美智子と心が通じあう。
美智子は国立大医学部に進学し医者に、孝夫は作家への夢を追い私立大文学部に進学し売れない作家となる。経済的には美智子に頼ることになるがお互いを尊重しあう二人は結婚する。医学界で華々しく活躍する美智子を支える孝夫は自然に家事を請け負うようになり、それなりに幸せな生活を送る。ところが美智子の妊娠から死産で美智子は精神的に病気になり、孝夫の生まれ故郷の中谷村に移ることに決める。
美智子はその村の診療所で月・水・金と働きながら生活で壊れた心を蘇らせてゆく。
この村には、村人たちが昔から守っている阿弥陀堂があり、そこに住む96歳になる堂守のおうめばあさんを通して、地球のほんの小さな片隅で、[手をつなぎあって人間らしく生きる]という、そこにはピラミッド型の上下関係は一切なく、それぞれの持ち味・タレントを尊重しながら輪になって作る世界の清らかさを私に教えてくれました。
この本は映画化され、ロケ地に保存されている阿弥陀堂の横を偶然通ったことがあり、イメージをリアルに感じ取れたことも嬉しかった。

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