未来

「未来」湊かなえ著

10歳の女の子、佐伯章子のもとに、一通の手紙が届く。それは20年後の章子からの手紙。

手紙には「二十年後の章子です。あなたは今お父さんを失った悲しみ、発達障害を患っているようなお母さん、教室ではいじめを受けて、、なにかと辛い思いがあると思いますが、20年後のあなたは、胸をはって幸せだと言える人生を歩んでいます。悲しみの先には光差す未来が待っています。頑張れ章子!」とあり、文章にして気持ちを綴ることを勧めていました。

そこで章子は20年後の自分にお手紙を書き続けていきます。

その手紙の中から、章子の日常。お父さんとお母さんの秘密、いじめっ子の亜里沙、べたべたついてくる美里、教師、母親を取り巻く大人の関係、男友達、、、、。それぞれが深い事情をもつ家庭の事情が描かれています。

章子や章子を取り巻く環境はどれもが衝撃的なエピソードで埋まり「そんな~!ありえな~い」といった感じの辛く苦しい事実の連鎖ですが、だんだん「ありえるありえる」とも思わされ、20年後の章子が書いてくれた、「あなたの未来は光が差しています」の文章に読者の私までが心の片隅に安堵の気持ちを持ちながら読み進められました。

第1章は章子の手紙

第2章は教師のエピソード 第3章は男子生徒のエピソード 第4章は未来に希望をもちながら進む章子のエピローグ。

「ああ、ありえるありえる」と思わせるに至った湊かなえの筆力には感動を覚えました。

文中で教師が口にしたセリフは湊ワールドに欠かせないメッセージだなと思いました。

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人の数だけ暮らしがあり、人生がある。他人の人生に自分のものさしを当てて口に出すことは、とても恥ずかしい行為なのだ。

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とても読みごたえのある小説でした。

直木賞候補作らしい。お薦めです。

 

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