【薬指の標本】 小川洋子 著
やはり予想していたように、チョット気味の悪い怖い小説でした。
主人公の私はサイダー工場に勤めていたのですが、機械に手が挟まり薬指の先を失ってしまいます。それでその会社を止め、事務員を求むという張り紙に応じて就職したのが、標本博物館でした。
思い出の品とか遺しておきたい品物を標本にして保存しておく博物館の事務員です。
そこで働いているのは経営者であり標本技術士の弟子丸氏と私の二人。
建物は取り壊しを待っているアパートのような古いものでしたが、丁寧さを隠し持った外観だった。
最初に会った依頼人は家が火事で全焼し両親と弟が亡くなり一人生き残ったという少女が焼け跡にキノコを見つけたのを保存してほしいという依頼でした。
ここには昆虫や植物といったありふれた標本は少なく、髪飾りやカスタネットや毛糸のたまやカフスボタンなど、数え切れないほどの無機物を持ち込まれていました。
そして弟子丸氏と私の地下室兼仕事場での奇妙な関係。
小川洋子独特の一見つまらないガラクタ小道具が深い意味となって存在する世界。気味の悪い情景でも何か清々しいものを感じさせる文章に惹きつけられる。
ずっと前に紹介した「沈黙博物館」のほうが考えさせられよかったです。こちらはお婆さんが亡くなった人の遺品をたしか盗み出し展示する博物館でした。
「薬指の標本」は間違って注文したわりには面白く読みました。