【偶然の祝福】 小川洋子著
久しぶりの小川洋子ワールドに酔った。
7つの短篇からなっているが互いにリンクしている。
主人公は女流作家の私と6ヶ月の息子と愛犬アポロ。
小説を書かなくちゃいけないのに、筆が進まず妄想と架空の世界へいってしまいます。
そのありふれた日常と妄想の世界の絶妙な絡みが小川ワールド!
中でも私が気に入ったのは第二篇の「盗作」。
私が初めて文芸誌に採用され、デビュー作となった小説は実は盗作だった。題名は「バックストローク」。
ある精神病棟で不思議な美しい女性に出会い話をするようになった。その彼女から精神病棟に見舞う弟の話を聞いた。
こみ上げるようにその話をスラスラと小説に出来たのである。
その小説がきっかけで小説家の道を歩むことができたので複雑な気持ちだった。
気になってそのご精神病棟に訪れても女性は見つからない。談話室のテーブルをフッと見るとそこに、薄っぺらな英語版のペーパーバックが1冊置かれていた。古い本らしく表紙は擦り切れ変色していた。
ソファーにかけ1ページ目から読み始めると、そこには、私が書いたのと、彼女が語ったのと同じ物語がそこにあった。題名は「Backstroke」
小川洋子さんは私のすごく好きな小説家の一人です。
この本の解説を書いた川上弘美さんも小川洋子さんのファンで、彼女の本は全部読んでいるとのこと。一番のお気に入りは短編集なら本書、長編なら「ホテル・アイリス」と書いてあったのですぐにアマゾンに注文しました。
ところが私の不注意で「薬指の標本」というのが届いてしまった。小川洋子ワールドは好きと言っても気味の悪い怖いものもある。「薬指の標本」って怖そう!
「ホテル・アイリス」は慌てて再注文しました。いずれも中古でお安いです。
いずれ本棚で紹介します。