「アルピニズムと死」山野井泰史著
蓼科でのバザーで、ネパールというとエベレスト。ということもあってか山好きのMさんがラリグランスクラブの話を聞きに来てくださいました。
エベレストというと沢木耕太郎の「凍」(2010年2月4日に紹介)を読まれましたか?と伺うと「読みました。あの山野井泰史さんは沢山本を出しておられます。「凍」もよかったけれど、やっぱり本人の記録には迫力ありますよ。」と聞きすぐにたくさんあった著作の中から「アルピニズムと死」を選びアマゾンで注文しました。
「凍」は山野井泰史の数ある登攀歴のなかでも最難関と言える過酷な悪天候のなか奇跡的にギャチュンカン登頂し生還した道程の沢木耕太郎によるノンフィクション小説でした。「アルピニストと死」は幼少時から40年に渡りあらゆる分野の登山に命をかけて楽しんできたとおっしゃる山野井泰史による登攀記録でした。
ギャチュンカン征服の時は37歳、凍傷で手足の指10本失いもう登山人生は終わりかと思われたのに、不死身の体。またまた数々の限界にいどみ初登攀を記録されています。
何人もの親しいアルピニストの仲間を失い、それでも単独または少人数で、酸素ボンベも使用せずあえて難ルートに命をかけて挑戦し続ける山野井さん。ともに歩む妻の妙子さん。
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山での死は決して美しくない。でも山に死がなかったら、単なる娯楽になり、人生を掛けるに値しない。
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登山ブームは「楽しむだけ」の登山者を生んだ。ネット上には無数の「山」があふれ、メディアはこぞって気楽な山を紹介する。
それにしても、、、アルピニストはうしなわれつつあるのだろうか。
「どこまでやれるのか」は必要ではないのだろうか。
古典的な考えかもしれないが、僕は、いつまでも限界にむかう道を忘れないでいたいと思っている。
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私は気楽な登山を楽しみながら到底自分には登攀出来ないヒマラヤ山系アンデス山系に挑むクライマーを尊敬の眼差しで仰ぎ見てきました。なのにロープウェイやハイウェイが出来てとても残念な気持ちになっていたから山野井さんたちのような冒険者・アルピニストの夢を壊してもらいたくないと切に思わされた本でした。