「ネガティブ・ケイパビリティ」箒木蓬生著 朝日新聞出版
答えのない事態に耐える力
ネガティブ・ケイパビリティという言葉を初めて知った。
「ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability負の能力もしくは陰性能力)とは、どうにも答えの出ない、どうにも対処しようもない事態に耐える能力」を指します」
という書き出しから始まるが、私にとって取っ付きにくい言葉だった。
でも読み進めるうちに色々な事例の丁寧な説明からよく理解出来た。
世界の悪の根源はネガティブ・ケイパビリティとは反対のポジティブ・ケイパリビティの思考から来るという。
残念なことに現代教育ではポジティブ・ケイパビリティ思考をドンドン養成している。
古代から繰り返される権力争いによる戦争と破壊。
ユダヤ人大虐殺、第2次大戦に突入した日本。ルワンダの民族闘争、ISによるテロ。
それらはみなポジティブ・ケイパビリティ思考によるものである。
著者はその、深く物事を考えずに簡単に答えを出し、その答えを押し付ける風潮に危惧を覚えている。
私も同感である。
明日には共謀罪が採決されるという。
日本はポジティブ・ケイパリビティの考えの価値観がはびこり、恐ろしいことになってきたと思う。
連日、共謀罪の恐ろしさについて識者のコメントが新聞に載っているし、テレビのワイドニュース番組でもその恐ろしさが語られ問われているのに、どうしてそんな法案が可決されるのだろう。
どうして自己中で高圧的な安倍内閣が選挙に勝つのだろう。
教育も医療も政治もこうであるべきだという偏った答えを準備しそれを言葉巧みに押し付ける。
それに異議を唱えるものは無視されたり爪弾きされたり抹殺されたりして繰り返されてきた不幸な史実は開渠にいとまない。
国会の答弁は安倍派と反安倍派とのディベートゲームのようだ。
どちらの派も自分達の主義主張だけで、そこにはネガティブ・ケイパビリティの入り込む余地がない。
ネガティブ・ケイパビリティの根底には、お互いに「寛容」と「共感」が無くてはならないというが、それを育てるには時間がないのが現実である。
私ら(少数派意見?)は政治に入り込める余地がない。
この本は世界の情勢に対する不安感を解き明かしてくれる本で勉強になったけれど、なんだかもう間に合わないという絶望で気が落ち込む本でもあった。
政治家、教育者、医者、子育てをしている親に読んでもらいたい本であった。あなたにも!