作家三島由紀夫の本は教養のために「金閣寺」を何十年も前の昔に読んだだけで、他の名作と言われた本は読んでいない。
でも彼の独特な生き方については関心があり彼に関する記事は割とよく読んだ。最後の割腹自殺のことには衝撃を受け新聞やテレビで報道されたことを熱心に読んだことを覚えている。
今回何故この本を取り上げたかは、息子が「結構面白かった」といってリビングに置いていったので読んでみた。
確かに思いがけなく面白かった。
主人公の羽仁男は無気力で生きるのも面倒になり服毒自殺を試みる。しかし死にきれず、目覚めたのは病院のベッドでまだ生きていた。「全くぅ!必要と思われないこの命。この命を売ろう」と新聞に「命売ります」という広告を出す。
まず訪ねてきたのが、風采の上がらない老人。自分の愛人を殺してくれという依頼。愛人には他の愛人がいて彼女を殺してくれるとその愛人はお前を殺すであろうということ。20万円で請け負う。
ところが愛人を殺すことになったけれど自分は助かってしまう。
ということの繰り返し。
文章は読みやすくスラスラ読める。思いがけない話の展開と最後のどんでん返し。
誰かに似ている文体。そうだ、村上春樹の本に似ている!
というか、村上春樹は三島由紀夫の本を必ず読んでいただろうし、影響をうけていると思う。
話の途中で村上春樹の本を読んでいる気になったほどだ。
それと、たしか今年のお正月にドナルド・キーンさんと寂聴さんの文学対談のような企画をBSプレミアムで見た時にキーンさんが「三島由紀夫はものすごくノーベル文学賞をとりたがっていた。ところが川端康成がとりものすごく悔しがっていた」と話されたのを思い出した。
そこで、今、ノーベル文学賞の季節。村上春樹がノーベル賞か?という噂になったこともあって、この「命売ります」はとても面白く、割腹自殺で死んだ三島由紀夫の死生観、川端康成の自殺、など、色々考え深いものがあり面白かった。
三島由紀夫の他の著作をアマゾンで注文した。