「プラテーロと私」 J.R.ヒメネス著 訳:伊藤武好 伊藤百合子 絵:長新太
最近、否、これまでにこんなに心が洗われ豊かな気持ちにさせられた本はなかったと思いました。
詩人ヒメニスが生まれ故郷のスペイン・モゲールでの生活を描いた散文集です。
ヒメニスと心から愛するロバのプラテーロを取り巻く、野花が咲き乱れる草原、元気な子どもたち、村の教会など平和そのもの。
ヒメニス(1881~1958)はこよなく故郷モーゲルを愛し詩作をしますが1930年の世界史にものこる過酷なスペイン動乱に遭遇しアメリカに移住します。
私の本棚で紹介したキャパとゲルダやヘミングウェイと同じ世代です。
ヒメニスは戦後モーゲルに戻り詩作を続け、1956年にはノーベル文学賞を受賞します。
とても著名な詩人だそうですが、恥ずかしながら私は知りませんでした。
私のすぐ近くに「ひなび」という食事処があります。古屋をリフォームした文字通りヒナビた小さな小さな食事処です。
若い女性オーナーがオーガニック材料を工夫してこしらえた美味しいお食事を一人で作り供します。
お店は彼女の好みに合わせて自然の木の実や葉っぱで飾ってあり、小さな書棚に何冊か愛読書が並んでいます。
そこから1冊「プラテーロと私」を借りて帰りました。
プラテーロと共に過ごす本当に美しい平和な日々を綴る詩133編。
そして本の最後には愛するプラテーロへの追憶の詩となります。
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プラテーロ、おまえは私達を見ているね、ほんとうだね?
子どもたちが、いわバラの間を賑やかに走り回っているのを、おまえは見ているね。
その枝には、洋紅色の水玉をちりばめた白い花が、チョウのように群れをなして、そっと咲いているだろう?
プラテーロ、おまえは私達を見ているね、本当だね?
プラテーロ、おまえは、ほんとうに私達を見ているね?そう、おまえは私を見ている。そして私は、谷間のぶどう畑を甘く包むおまえの悲しげなやさしい鳴き声が、晴れ渡った西空に聞こえると信じている。
そう、そう、私には聞こえるのだよ、、、、。
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心にたまった邪念を洗い流し清めてくれる本でした。早速注文して私の本棚におさめます。