「こわがっているのはだれ?」 フィリッパ・ピアス著 高杉一郎訳
またピアスです。
「黄いろいボール」は「こわがっているのはだれ?」 の短編集の中の一つです。
この短編集は幽霊が主題になっています。
「黄色いボール」に出てくるのは犬の幽霊です。
コンとリジ-という幼い姉弟が、いつも遊んでいるカエデの古木の洞から、ある日偶然に黄色いボールを見つけます。そのボールで遊んでいると、何かサ?と目の前を横切る影に二人は気付きます。それは犬の幽霊でした。
きっとその犬は、二人が住むずっと前に、いつもその黄色いボールを追いかけて遊んでいたのでしょう。
不思議で怖いお話だけれど、その世界には死んでも生き続ける魂が浮遊し、大ヒットした「千の風にのって」の歌を思い出させる、何かしみじみ考えさせられた短編集でした。
訳者のあとがきによると、ピアスは「私は、スーパーナチュラルの話を書くのが好きです。それは読む人の、恐怖心を書き立てるような話と、スーパーナチュラルの手法を使って、現実の奥の深みにある実体に触れていく話があります。私はスーパーナチュラルの手法を使わない限り、物語で人間のかかわりあいを深く探ることは出来ないと幾たびとなく考えてきました。」と話しておられたそうです。
今私は木々に囲まれた蓼科の古びた山荘で生活しているのですが、今日もテラスで本を読んでいると、苔むした岩の後ろから4年前に死んだ愛犬が顔を出してじっとこちらを見ているような気がして、ふ?と懐かしさがこみ上げてきました。それで夏休みにやってくる小さな孫達のために下草を刈り、木登りやハンモックで楽しめるように山荘の周りを整備したのでした。朽ち果てそうになっている犬小屋はそのままにして。
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