かわいそうだね

「かわいそうだね?」綿矢りさ著  文春文庫
恋人の隆大が、ある日とつぜん元彼女のアキヨを「自分のアパートに居候させる」と宣言する。百貨店の洋装売り場に勤める樹理恵は「そんなこと許せないよ」と驚く。アキヨは求職中で住むところがなく、「かわいそうじゃないか。就職が決まるまでのことだ」と隆大。彼は「愛しているのは樹里恵だけでアキヨには恋愛感情は絶対にない」という。
つい樹里恵もアキヨがかわいそうになりそれを許したけれど、勤務中も二人の関係に思い巡らせおちつかない。
そんな悶々とした樹里恵の感情、正体の分からないアキヨ。二人の女性の間で悩む隆大。の3角関係のお話です。
でも単なる三角関係のお話ではない。
「かわいそう」と言ってかわいそうな相手を助けることが、1方で他人を苦しめることがある。「かわいそう」と思っていた相手は実はかわいそうでない場合がある。「かわいそう」と思うのは自分は上位に立って相手を卑しめることになるのではないか。などなど。

ラリグランスクラブのネパールの支援活動も「かわいそう」という感情と密着しているところがあるから勉強にもなった。

第6回大江健三郎賞受賞作品だけあって、まわりくどい文章だったけれど内容に深いところがあって、最後まで興味深く面白く読んだ。

他に女子同士の複雑な友情を描く「亜美ちゃんは美人」の短編もあり、共感することが多々あって、これもとても面白かった。

綿矢りさの著作本をもっと読みたくなった。

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かわいそうだね への2件のフィードバック

  1. Michiko Michiko のコメント:

    お久しぶりの投稿でしたね。著者名は「綿矢りさ」ですね。デビュー作で受賞作の「蹴りたい背中」を読んだだけで私には縁がない作家でした。19歳で芥川賞を受賞したという彼女、もう31歳ですか。年月の流れは速い速い。
    「蹴りたい背中」を読んだ時に「芥川賞も変わった」と思った事を思い出します。芥川賞と言えば平野啓一郎氏の時も「分からない」と思った記憶ですが。最近は軽めの本ばかり読んで文学と縁遠くなっています。

    • Breeze Breeze のコメント:

      Michiko様。コメントをありがとうございます。投稿をさぼっていたのですがこうしてコメントをいただけると嬉しくて、本を読むだけで終えず、本棚に載せようと意欲がわきます。私は最近老人問題の暗い本ばかり読み、本棚で紹介する気にならなかったのです。「蹴りたい背中」ですか?読んでないので読んでみますね。

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