散るぞ悲しき

「散るぞ悲しき」硫黄島総指揮官・栗林忠道  梯久美子著 新潮文庫
第二次世界大戦の最も悲劇的な戦いだったと言われる”硫黄島の戦い”で総指揮官だった栗林忠道の生涯を辿ったノンフィクションである。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品です。

1944年6月、栗林忠道が戦地硫黄島の司令官として任務を受けた時から、日本は戦争に負けることは明白だった。アメリカ軍がB29による日本空襲作戦に出るであろうことも大本営参謀にはわかっていたし、その時期を遅らせるために硫黄島を2万の兵士の命を犠牲にして守りぬくことを参謀は要求していたというのである。

米兵は約6万人、日本兵は約2万人。

硫黄島には水はなく、援軍もなく、弾もないなか、赤紙1枚で駆りだされた軍人でもない普通の市民であった兵士たちは戦い続け、翌1945年(昭和20年)3月26日、、生き地獄さながらの中、兵士はあまりの苦しさで玉砕を望んでいたが、栗林は玉砕を禁じ、自らも自決を選ばず、緻密な作戦を練り、5日で落ちるという米軍の予想を覆し、米軍による最期の壮絶な突撃を36日間持ちこたえて、最期、部下たちの先頭に立って敵陣に突撃してほぼ全員が命果てた。

米兵も1万人近い死傷者を出す、無残な戦争だった。

赴任して戦死するまでの9ヶ月の間に栗林は家族あてに41通の手紙を書いている。戦争中戦場から家族に当てた手紙は綺麗事が書かれたものが多いが栗林は戦地の窮地や留守宅の東京の空襲による危険など率直に書いている。

このノンフィクションは、栗林の手紙とわずかに生き残った兵士の証言を丁寧に検証して書かれている。

その手紙のことを知った有名な米映画監督クリント・イーストウッドが、今年「硫黄島からの手紙」という映画をアメリカから観た観点から制作した。栗林忠道役は渡辺謙、1兵士に嵐の二宮和也、などが出演し、8月15日敗戦日にはテレビでも放映され、私も観た。

映像で戦争の恐ろしさ酷さを視覚的に身に感じることができたけれど、この本にはとても及ばない。

私は、栗林が硫黄島で戦っている頃生まれたのにかかわらず、京都にいたため悲惨な空襲にも会わず、敗戦という哀れな日本の失敗や、戦争の恐ろしさを、学校や家庭で教えられてこなかった。安倍首相はどうなんだろうか?今の政治家は本当に戦争の恐ろしさを身に感じているんだろうか。この本を読んで欲しい。
この本が一人でも多くの人の目に触れ、戦争反対の声が湧き上がることを望みます。

戦争反対をどのような行動で表すことが出来るのか心もとないが、きのう、日本国憲法をノーベル平和賞にというキャンペーンに署名をしたのでした。

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