シュガータイム 小川洋子著 中央文庫
口にすると甘く舌にとろけていく美味しい砂糖菓子。
この本は、女子大学生のわたしの、春の訪れとともに始まり、秋の淡い陽射しの中でなかで終わった数ヶ月間のお話である。
プラトニックラブで結ばれている恋人、腹違いの弟、理解し合える親友とその恋人との、関わりの中での話である。
恋人には彼女がいることがわかる、愛する弟は成長障害をもつ小人、明るく無邪気な親友。ところがわたしには、始終食べ続けないと我慢できないという厄介な問題をかかえている。
こうして説明すると特殊な状況と思われるが、違和感のない小川洋子独特の流れるような筆の運びでグングンひきこまれる。
林真理子が、解説で「シュガータイム」を絶賛しているが、
・・・・
「こんなふうにして、いろいろなことが終わっていくのね」
「わたしたちのシュガータイムにも、終わりがあるってことね」
「砂糖菓子みたいにもろいから余計にいとしくて、でも独り占めにし過ぎると胸が苦しくなるの。私達が一緒に過ごした時間って、そういう種類のものじゃないかなあ」
という締めくくりは、あきらかに余計である。
・・・・・
と言っている。
私はその最期のくだりで、なるほどなるほどと思ったのだが、確かに林真理子が言っているように、その説明っぽいものがなくても、あるいは無い方が、読者は小川洋子の世界に余韻を持って浸れたかもしれないと思った。
小川洋子の初期の初めての長編。