卒業

[卒業] 重松清 著 新潮文庫
「まゆみのマーチ」「あおげば尊し」[卒業]「追伸」という4編の小説からなっています。
 重松氏が巻末のあとがきで次のように書いておられます。少し長いですが書き写します。
連作に取り掛かるにあたって、書き手として目論んでいたことは2つあった。
一つは、「卒業」という言葉から多くの人が想像するとおり、始まりを感じさせる終わりを描くこと。その始まりが、たとえば「出発」や「旅立ち」といったものにつながってくれればうれしいし、終わりにしても、できるならそこに「和解」のよろこびを溶かし込みたいと祈って、4編を書いた。
 もう一つは、こちらは1編が4百字詰原稿用紙120枚前後というボリュームからの要請でもあるのだが、リアルタイムで進む物語の中に、過去をどう織り込むかということ。思い出を持たない「卒業」は寂しい。たとえそれが苦い後悔ばかりだったとしても、4編の登場人物それぞれの「卒業」には、長い年月を生きてきた、その時の流れの厚みを持たせたかった。
作者の目論みは見事に私の胸に入り込みました。あとがきのこの文章は、4編を読み終わってから読んで、作者の意図をそのまま読み取ることが出来た自分が嬉しくもありました。
人は母から生まれ、父に会い、兄弟姉妹に会い、友人に会い、、、、、、、そんな生活の中で、愛し合い、誤解したり、恨んだり、許したりして生きていく。
中でも、最後の「追伸」では、むせび泣いてしまった。小説を読んでこんなに泣いてしまったのは珍しい。人との結びつきは「許し、許され」を繰りかえしながら誤解を解いては、新たに始まる絆を大切に生きていくんだなと思わされて<涙>でした。

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