方丈記 鴨長明 角川ソフィア文庫
鴨長明(1155~1216)は平安時代の末期・鎌倉時代の文人で、彼の書いた「方丈記」は日本人の誰もが中・高校の国語授業で学んだはずです。
私もそうですが、書き始めの[行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、人とすみかと、またかくのごとし。]という口調までは覚えていますが、あとはおぼろ、、、。
簡単に説明しますと、長明は、今の下鴨神社の正禰宜(ねぎ)の次男という身分の高いところに生まれたけれど、相続争いで負けて、終の住処となる広さは方丈(今の4畳半ぐらい)の小さな庵を京都の郊外(今の伏見のあたり)に建て、そこから世の中・人生の無常について書き記したのです。
正岡子規は病気で<病床六尺>となり、優れた俳句を発信し続けましたが、長明は隠遁といっても山奥にではなく都の郊外なので、頻繁に自由に出かけていたらしいです。
時は源平の争いの真最中、宮廷から武家の社会に変わるは、天地異変が次々起こるはの大混乱のなか、長明は小さくともセレブな庵に鎮座しつつ、被災体験者として克明に混迷する都のさまを、書きのこしたのでした。
彼は芸術家としても一流、知識人としても一流で、野心家でも策略家でもなく、大火、竜巻、飢餓、地震が京を直撃しても、己を高めながらぶれることなく、書き記したのです。
その頃から800年たった今も、世界中で頻繁におこっている大殺戮、地球異変。
新聞で、「京都で起こった天災・人災について書かれた「方丈記」の出来事が、今もなお世界中で見られる」という記事を読み、何十年ぶりかで再読し、現代に通じるそのリアルな描写に驚いてしまいました。
なんという空しさ。しっかり無常観に浸りました。
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