「カンガルー日和」 村上春樹著 講談社文庫
村上春樹が今年のノーベル文学賞を受賞するのではないかという噂が広まっています。
私も、先日、朝日新聞に寄稿された、彼の尖閣諸島に対するコメントなど読み、いよいよノーベル賞受賞かなと思いました
それで、ごそごそ書棚からずっと前に読んだ「カンガルー日和」を取り出し再読しました。
1983年に出版されています。ある雑誌に連載された短編で、23編の小説が集められています。
「カンガルー日和」の中で一番引かれた一編は「図書館奇譚」です。
この1編には、春樹ワールドに頻繁に出てくる井戸を思わせる図書館に潜む迷路や、羊男が出てきて、都会の片隅に起こりうる奇妙でもやもやしたシュールな世界が展開します。
以前この本棚でも紹介した彼のデビュー作である「風の歌を聴け」は1979年。「カンガルー日和」は3年後の1983年。それから30年余り。2年前2010年に大ブレイクしベストセラーになった長編「1Q84」が1984年を示しているなら、「1Q89」の舞台は「カンガルー日和」の翌年になります。彼独特の小説の世界は30年経っても一貫していると思います。
彼の小説には、背景になる年代が示されることが多いです。
彼は私より6歳ほど若いけれど、彼が育った地域、戦後の復興、大学紛争から東京オリンピック、高度成長を経て震災や地球危機という時代の遍歴の体験に共感でき、でも一方、私が全く想像も出来なかったシュールな世界に案内してくれる文学はとても面白い。
私は若いとき、彼の小説は全く意味不明でわからなくって、60代になってからはまったのですが、若い世代や中国など世界中で人気があるというのが不思議です。
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