「亡命者」 高橋たか子 著 講談社
この本の主題になっている「亡命者」というのは、辞書に載っているように、いわゆる政治上の原因で本国を脱出して他国に身を寄せる人とは全然違った話で驚かされた。
自分という人間を実態としてとらえられない主人公の「私」は、日本からの亡命者という気持ちでパリに行き、滞在許可を得るために大学に所属しつつ学生として生活している。
生きるってどういうことなのか回答を求めてパリをさ迷ううち、日本でならばあたかも世捨て人が悟りを開くために禅寺で瞑想するかのように、大きな敷地を持つ観想が目的のカトリック修道院の一隅に住み、霊想をしながら籠もる生活を始める。
そこには同じような思いをもつ男性も女性も参加していて、それぞれが瞑想するための小さな部屋に住み、時間がくると聖堂で行われるミサに与ずかるというような生活である。
本の中盤から結婚して愛し合いながら別々の小部屋で瞑想しながら生活する夫婦の話に移っていって終わるのだが変わった小説だった。
要するに、我々人間は、前世(霊界・天国)から亡命者としてこの世に来て、死ぬことであの世(霊界・天国)に戻るということに主人公の「私」は気付くという本なのかな。
今まで考えもしなかった想像の世界に接して驚かされた。
前回本棚で紹介したヘレンケラーが感じていた霊界と合致するところがあって考えさせられた。
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