「ミーなの行進」小川洋子著
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父を亡くして母子家庭になった朋子の母は、岡山を出て東京の洋裁専門学校で勉強することになる。それで朋子は1972年3月から1年間芦屋に住む叔母夫婦の家に預けられることになった。
芦屋のお屋敷は夢のような西洋館で大きな庭園もある素晴らしい家だった。
そこには飲料水会社の素晴らしくダンディで素敵な跡取り息子の伯父と、ちょっとアルコール依存症気味の伯母、伯父の母であるドイツ人のローザ伯母さん、お手伝いの米田さん、庭師の小林さん、従妹のニーナ、カバのペットのポチ子が暮らしている。従兄弟の龍一はスイスに留学中。
新幹線で、岡山からひとり芦屋にいった朋子は、ハイカラな重厚なお屋敷に驚くが、みんなから歓迎され、芦屋で過ごした1年間を朋子が思い出して書いている。
その時その時の情景が目に浮かぶようで楽しんだ。
以前お話したと思うが、背景が私のなじみのある場所の場合、リアルに臨場感を味わえて何倍も楽しめる。
住宅は恐らく阪急芦屋川から坂道を北上する六甲ロックガーデンに通じる道に面した高級住宅、図書館は村上春樹も利用したといわれる芦屋私立図書館、病院は私もお世話になっている御影の山手の甲南病院,阪神芦屋駅のAお菓子屋はマドレーヌが有名なアンリシャルパンテ、六甲山ホテル。海水泳は須磨の海岸。
ミーナのコレクションはマッチ箱、ペットはコビトカバ。体の弱いミーナはポチ子に乗って登校するという奇妙さ。ペットとマッチ箱は小説で重要な役割を担っているのは小川洋子の世界ならでのことで楽しい。
裕福な優雅な生活の中にも、それぞれ複雑な問題を抱えているらしき変わった人たち。
朋子は皆にすっかり溶け込み可愛がられながら生活する。
1年たって別れを惜しみながら再会を約束して分かれるが次に合うのは30年後。
震災にもあっただろう。家はもう存在しなくて、そこにいた家族は天国にあるいはスイスにと分かれて住んでいるが、そこにもあるはずの苦しみや悲惨さは、やさしで包まれていて、それなりの幸福な生活が自然体に続けられていることも分かり、なんともいえない平和な安らぎを与えてくれる本でした。
阪神淡路大震災のメモリアルデイに読むに相応しい本だった。
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