「銀色のかぎ針」小川洋子著
「やさしい訴え」とあわせて読んだ小川洋子の短編集「海」を紹介します。
「銀のかぎ針」は、「海」に載せられている7編の短編のうちの一つです。
たった4ページの短さ!
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岡山から四国の高松に向かうマリンライナーの車内の出来事です。
車窓からみる田園風景、鷲羽山(わしゅうざん)トンネルをぬけて突如現れる瀬戸大橋と海。(懐かしい風を運んでくれるような小川洋子独特の爽やかな描写です。)
前に座った老婦人が編み物をはじめます。それを見ている私(主人公)は、祖母が5人のこどもと9人の孫達にいつもセーターやチョッキをせっせと編んでくれていた情景を次々と思い出します。
「高松までですか?」老婦人が話しかけてくる。「はい」私は答える。「祖母の13回忌の法要に」 橋を渡りきると、もうすぐそこが高松だ。
(というところで話は終わる)
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たった4ページの短い話の中に小川洋子の小説の骨組みが現れていると思う。
小川洋子は、日常のありふれた出来事や、打ち捨てられたような小物から、深くて大きなイマジネーションを引き出し、不思議な世界を作り出して読者を感動させる。
この短編の中で老婦人の使っている針は「銀色」とは書いていない。
でもこの短編の中には確かに銀色に光るかぎ針が存在する。
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