「 『自分の木』の下で 」 大江健三郎著 大江ゆかり絵 朝日文庫
大江健三郎ご自身が四国の田舎にある里山の谷間に育った生い立ち、知的障害を持つ音楽家の長男光君から学ばれてきたことなどを根底に、子どもの持つ素朴な疑問(たとえば、何故子どもは学校に行かなくてはならないの?)に答えるかたちで書かれた、生きることについてのメッセージです。
子ども達に一番伝えたいことは、「取り返しが出来ないことをしないように」というメッセージではなかったか。
それは「暴力と自殺」です。
暴力は人を殺めること。戦争は大きな暴力であり、自殺も自分に対する暴力であるということです。めげそうになった時は「ある時間、待ってみる力」を持って決して諦めないで!!
それと「Up- standing man」まっすぐ聳える木のように、まっすぐ立って生きる人間になろうという呼びかけをされています。
人は、それぞれ自分の木を持っていて、この世に生まれてくる時、その木から魂がするりと出てきて身体に入り込み、死ぬ時はまたその自分の木のなかに戻っていくという祖母からの話を、ずっと大切にされていることなど、胸を打たれるエピソードが、妻であるゆかりさんの素晴らしい絵で生かされ、あたかも光君が奏でるメロディーにのせられているように語られています。
とはいえ、文章は結構難解。
実は私、白状しますと、大江健三郎の著書は数冊読もうと試みたけれど読み辛くて完読したのがありません。
新聞のコラムなどは読んでは氏に尊敬の念を持ってはいるのですが。
で、この「自分の木の下で」は、初めて完読した著書であります。
私と同様に大江健三郎の著書が苦手と思っておられる方(けっこういらっしゃるのを知っています)是非読んでください。感動しますよ。
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