「復興の精神 」新潮新書
養老孟司(解剖学者) 茂木健太郎(脳科学者) 山内昌之(東大教授) 南直哉(禅僧) 大井玄(医師) 橋本治(作家) 瀬戸内寂聴(作家・僧侶) 曽野綾子(作家) 阿川弘之(作家)
の9名による3.11で感じたエッセイ集。副題「これからをどう考えるか?」
今回この本の紹介を新聞紙上で見つけ、著名な学識経験者方の声をまとめて窺えると思い買い求めました。
被災地の復興については9名の方々全員がそれぞれ言い表し方は違っても、日本が、2千年も前から日本を度々襲った災害から乗り越えてきた史実を考え、今回の大災害も乗り越えられるとの希望に満ちた意見でした。
一方、政治家の無力を嘆くというのも全員一致した意見でした。
原子力発電の是非については、原子力に頼らず自然エネルギー開発が望ましいと言っても、日本のエネルギーがそれで賄えられるか否かの問題では具体的にどなたも答えが出せない状態で、それぞれの方が迷いながらも興味深い意見を述べられていました。
9名のうち私が一番楽しみだった方は阿川弘之さんで、58年前に書かれた彼の著書「魔の遺産」を最近読み直したところだったので、今回の震災でどのように思われたかが知りたかった。
「魔の遺産」は敗戦8年後に、主人公の作家が広島でのルポジュタールを頼まれ、原爆症の後遺症と必死に戦う人々のこと、被災者治療と言う名のもとにアメリカから派遣された医療班のABCC(Atomic Bomb Casualty Commission 原子爆弾傷害調査委員会)のまやかしのこと、など、むごい原爆症の現実、戦争に対する感慨、人類がうみだしてしまった核兵器という現代の悪魔の実験場となった広島の実情がつぶさに書かれていて、原爆の恐ろしさをひしひし感じ驚き感銘を受けた書物でした。
前述したように、阿川さんも地震津波の復興は出来ると断言されていましたが、かなり驚かされた記述がありました。その箇所は、
<特に在日米軍の大掛かりな人員と物資の協力、救助活動や避難所への支援を目の当たりにして、日米同盟がどれだけ大切か、アメリカこそ本当の友達として付き合うに足る国であることが、皆よく分かったと思いますね。>
<彼ら(北朝鮮)に勝手放題をやらせないためには、日本が必要最小限の核武装をすべきだと僕は思いますね。99.9%実際には使えない抑止力としてです。>
<今の首相に望んでも無駄でしょうが、この次か次の次の総理には、本気で憲法改正に取り組んでもらいたいですね。平和憲法を守れ、平和は素晴らしいと言っていれば平和に暮らせる、そういった甘ったれた夢から戦後66年ぶりに、もう眼をさましていい頃ですよ。>
という箇所です。
ちなみに私は、原子力反対、憲法改正反対、アメリカから距離を置くという甘ったれた夢を持っているので驚きました。
阿川さんの最後の<「禍転じて福をなす」を念じて行動を起こすことこそ、犠牲になった何万人かも、決して無駄死にではなかったことになる。>との言葉は、9名全ての方々に通じる言葉でした。
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