「沈黙博物館」小川洋子著
博物館専門技師の僕が乞われて訪ねてきたところは、昔は豪邸だったらしいよごれた邸宅であった。
雇い主は年齢不詳の二つ折れに腰の曲がった汚れた老女で、彼女が13歳から集めてきたという得体の知れない山になって積み上げられたガラクタの収蔵品を整理し、邸宅を博物館にしてほしいという要請であった。
その収蔵品は、村で亡くなった人の形見なのであるが、宝石とか金銭的値打ちのあるものではなく、亡くなった人の生き様を表す遺品であり、その形見が欲しいために老女は村人が亡くなると庭師に形見を盗みに行かせて集めたものである。
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「私が目指しているのは、人間の存在を超越した博物館じゃ。なんの変哲もないとおもわれるゴミ箱の腐った野菜屑にさえ、奇跡的な生の痕跡を見出す、、」
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登場人物は、僕、老婆、美しい養女、家政婦、庭師、修道僧。すべて名前は書かれていない。
僕に遺された母の形見はただひとつ。「アンネの日記」
死に行く人がこの世に遺していく物はなに?彼を一番あらわしている遺品は何?
私の亡くなった両親は、私に何を遺していったのか?
私は何を遺して死ぬのかしら?
奇妙で謎めく話の中に人間の生と死を考えさせられる本でした。
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