「戦場から女優へ」サヘル・ローズ著
イラクの首都バグダットで10月25日、連続爆弾テロがあり、136人が死亡、600人近くが負傷したという。バグダットでは8月にも政府庁舎を狙ったテロがあり、このときも100人以上の死者がでた。(10月26日朝日新聞)
1980年に始まったイラン・イラク戦争は1988年8月に停戦の合意に達しましたがその後も紛争は絶えていません。
自爆テロは日本人の感覚では全く理解しがたい行為で、それによって亡くなった方も勿論無念ですが、命が助かっても、身内は全部死に一人生き残ったり、怪我の後遺症の苦しみに苛まれている人々の、肉体的精神的痛みはいかばかりか想像も出来ません。
「戦場から女優へ」を書いたサヘル・ローズさんは、1989年のイラクによる空爆で破壊された町の瓦礫に埋まり、両親兄弟全員が一瞬に死んだ中、ただ一人生きていました。4歳でした。
3日間も埋まったままにいた時、テヘランの大学で心理学を学んでいたフローラがボランティアで駆けつけサヘルを発見します。サヘルは命が助かり孤児院に引き取られます。
一方サヘルのことが気がかりでならないフローラは、結局サヘルを養女にして引き取ります。フローラは裕福な両親から勘当され無一文。日本人のフィアンセを頼ってサヘルをつれ日本にやってきます。サヘルは8歳でした。
フィアンセが優しかったのは1週間。彼は心変わりをし2人は又無一文で彼のアパートを出て、行く当ても無く野宿します。
それからの苦難の日々。学校でのはげしいイジメと貧困。サヘルが中学を終えるまで続きます。高校になって初めて、人間らしい生活が出来るようになり努力の末女優への道が開けてきます。
日本で女優として認められ歩みだしたサヘル。
サクセスストーリーと一言では決して片付けられない重く深い思いが伝わってくる本です。
世界のあちこちで頻発するテロによる破壊と虐殺。報道の裏には何万人もの人々が理不尽な苦しみを押し付けられている現状を、私たちはいつも認識しておかねば、いつまでたっても平和な世界は実現しないでしょう。
私に一体何が出来るんでしょうか?
考えさせられた本でした。
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