死ぬ気まんまん 佐野洋子 著
代表作「100万回生きた猫」の絵本作家、エッセイストとしても著名な佐野洋子さん。私の本棚でも何冊か紹介したお気に入りの作家です。
この「死ぬ気まんまん」は亡くなる10年ほど前に癌を患い、治癒したり再発したりされながらも作家生活をおくられ、亡くなる2年ほど前に、死に否応なしに向き合いながら書かれた3篇のエッセイです。
- エッセイ・・死ぬ気満々
- 対談・・佐野洋子と平井達夫(築地神経科クリニック医師)
- エッセイ・・知らなかった-黄金の谷のホスピスで考えたこと
8月に思いがけず癌と向き合うことになった私にとって本当に身につまされる本だった。
3回は繰り返し読んだ。これまで読んだ佐野洋子の作品の根底にある彼女の死生観に目が開かれる思いがした。
*「死ぬ気まんまん」の1節
私は今が生涯で一番幸せだと思う。70歳は、死ぬにはちょうど良い年齢である。思い残すことは何もない。これだけはやらなければなどという仕事は嫌いだから当然ない。幼い子供いるわけでもない。
死ぬとき、苦しくないようにホスピスも予約してある。家の中がとっちらかっているが、好きにしてくれい。
・・・・・・私が書いた文章のよう!
*対談の一節
佐野:生きていることは何かと言うのがありますでしょう
平井:そうですね
佐野:ただ息をしていればいいのかというと、人生の質というのがあるじゃないですか。それを、何よりも命が大事と思うのはおかしいですよね。
平井:おかしいですよ。
佐野:そう思いますか?
平井:思います。医者はほとんどそう思っています。
・・・・・私もそう思います!
*知らなかった、ホスピスについて
頭の神経が狂ってしまっている私は、こくこくと目が良くなっていのだった。遠くの椎ノ木の葉っぱが一枚一枚くっきりと、細い金の色にふちどられているのが見えてしまう。それはとんでもない疲労を私にしいた。一番何に似ていたか。ゴッホの絵に似ていた。
・・・・・
私も病室の窓から流れ行く雲を飽きずにながめた。自然が好きな私でも、病気にでもならないとゆっくり天空を眺め死生観を思い巡らせることはなかった。
佐野さんの「死ぬまで人は生きているのだ」の言葉に「そうだそうだ。死ぬまで生きて見せる」と気合を入れさせられた本でした。