悼む人 天童荒太著 文芸春秋社
「おくりびと」がアカデミー賞に輝いて、テレビでもその話で持ちきりです。
亡くなった人の体を清め、棺に納める仕事人納棺師を描いた映画だそうである。
私も友人が亡くなった時、葬儀の始まる前に納棺の儀式に立会ったことがあり、20代と思われる若い納棺師さんが、遺体に向き合い、荘厳で優雅な動きでことを運ぶのに驚いた体験がある。友人が丁寧に扱われよかったと思った記憶がある。
映画を観た人は、だれもが感動し、自分もこのように<おくられたい>し、愛するひとを<おくりたい>と思うそうである。
しかし、世の中、このように家族や知人に暖かく見送られる人ばかりとは限らない。
孤独死をする人、憎まれて殺されたり、闇に葬られた人々も大勢いる。
「悼む人」はそのことに気付いた1人の青年が、誰からも死を顧みられることもなく葬られた人を捜し求め、亡くなったという場所にひざまづき、その人をただ悼む、という話である。
どんな凶悪な悪人であっても、どんなに不幸を背負った人でも、一生に一度は誰かに愛され、誰かを愛した経験があるにちがいない、と青年は思う。
そんな人の死を悼みたいと思って、青年は旅を続ける。
映画「おくりびと」が華々しく話題を提供する中、「悼むひと」のことも同時に考えてみたいと思って紹介しました。
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