聖家族のランチ 林真理子著
怖い話だった。
「極悪で残酷なことが出来るのは、男より女である」ということを聞いたことがあるが、そうかもしれない。
主人公の佐伯ユリ子は、人より抜きん出た美人だったが、庶民の育ちにコンプレックスがあり、セレブに憧れる女であった。そのため背が低く顔も悪いがエリート銀行マンの男と結婚する。ヨーロッパの海外赴任も体験し1男1女に恵まれ良妻賢母に徹し、子供たちを東大に何人も進学するエリート校と、超お嬢様女子校に入学させ、優越感に溢れる生活をしている。そのうち海外での体験を活かし、料理を教えることを始め、料理家としても名をあげ始める。
ところが晴れやかに世界を広げはじめたユリ子に反して、夫の銀行はバブルがはじけて大変で、お坊ちゃんの息子は新興宗教にはまり、娘はありきたりの進学はつまらないと大学進学を拒否したために彼氏に捨てられる。
そんなことに全く気が付かないユリ子は、料理の本を出版してくれるスマートな編集長と不倫の間柄になる。
ある日その男が家を訪ねてきた時に、母親の不倫に気付いた息子は、カッとして男を包丁で刺し殺してしまう。
思いもかけない出来事に、この家族は仰天し、それぞれが自分と家族を守るために、このことはなかったことにしようと、殺人事件を闇に葬ることにする。
そこで決めたことは、、、?
殺人現場は、料理教室も開ける各種包丁も揃った広い台所なので、ひとまず大型冷凍庫に死体を隠すことにする。ところが手足が邪魔なので、肉きり包丁で切断することにする。
そして毎日少しずつ・・・食べることにしたのである。
ユリ子は料理人なので、香辛料を効かせた豪華な料理を毎日工夫して作る。家族そろって毎日食卓を囲む。
ああ。怖い!
ああ。気持ち悪?ぃ!
最後、どうしても頭部を料理することが出来ず、家族みんなで捨てにいく。
結末は読者の想像にまかせる終わり方で、私にとっては、当然後味悪く未消化で終る。
あまり紹介したくない本だけれど、気持ち悪さと女の怖さを知ってもらい、恐怖を分かち合いたいと思って本棚に収めました。
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