辺境・近境

「辺境・近境 」 村上春樹著 新潮文庫
久しぶりの村上春樹さん。
1990年から1997年の旅の記録。7篇。
1.イースト・ハンプトン (1991年)作家たちの静かな聖地 
  ニューヨークから車で2時間で行ける超セレブな作家やお金持ちの別荘地。
  春樹さんの感想は「住みたくないね(住めないけれど)」
2.無人島 からす島の秘密 (1990年)
  瀬戸内海に浮かぶ個人所有の6千坪の小島。水なし電気なし。テント生活3泊のロマンを求めてのつもりだったけれど、予想外の災難に会い1泊で逃げ出す。
  春樹さんの感想は、「無人島というのはまことに奥深く興味深いところであった。」
3.メキシコ大旅行(1992年)1ヶ月をかけての長旅
  私はメキシコには、マヤ遺跡を訪ねる旅をしただけだけれど、ペルーの僻地には何度か行っているので、状況を想像することが出来楽しく読んだ。
  春樹さんの感想は「メキシコはとても魅力のある土地だった。またいつか訪ねてみたい。」
4.讃岐・超ディープうどん紀行
   讃岐うどんは好きだけれど現場で食べたことなかったので、やっぱりホンマもんは現場で食べないとあかんなあと思わされた。
5.ノモンハンの鉄の墓場。
  春樹さんが小学校4年生の頃ノモンハン戦争の写真をみたことが強く印象に残り、ノモンハン戦争のことが書かれた本には必ず目を通していたそうです。「ねじまき鳥クロニクル】第2部でノモンハンと満州のことを書いたら、雑誌「マルコポーロ」から実際にそこにいってみませんかという話が来てすぐに引き受けた。ということでの長紀行文です。
  私は春樹さんの「ねじまき鳥クロニクル」を前に読んだが、ノモンハンのことが載っていたところがよく理解できなかった。ところがこの紀行文で自分の無知を恥じた。もう一度読もうと思う。
  今年は戦後70年ということで、硫黄島のことや満蒙開拓団のことサイパン玉砕のことフィリピンのこと中国での日本軍の残虐行為、沖縄のことなど特集番組が多く組まれているのを見て、つくづく自分自身日本が仕向けた戦争の真相を学習してこなかったこと真相を教えられてこなかったことを悔しくおもっている。
  戦争で生き残った方が口々におっしゃるのが「国策に逆らうことは絶対に出来なかった。」「当時は国策だからお国のためになるのならと敵軍を殺すことを自分に許していたけれど、殺したことの苦しみは70年間忘れたことはなかった」「この先、国が戦争に加担すると決めたならば、国民はそれに従い殺すか殺される世界に巻き込まれることになる」「戦争はどんな理由があろうともしてはいけない」
  私達は過去の戦争の悲劇を決して忘れてはならず、でも私が出来ることは戦争をしないという政治家に選挙の票を入れることだけである。日本の政治はどうなるんだろうか。
  春樹さんの感想は、「僕はノモンハン戦争のことを、決して忘れないだろう。忘れないことそれ以外に僕の出来ることはおそらくなにもないのだから。」
6,アメリカ大陸を横断しよう
7,神戸まで歩く
  【1,995年の阪神淡路大震災から2年目。あの巨大な暴力が僕の生まれ育った町から何を奪い何を残していったのかを見届けたかった】西宮から三宮までを歩く紀行文。
  春樹さんの感想。そこには海も山もあった。しかし今ここにあるのは別の海と山の話だ。
  春樹さんが辿った道は私の日常生活の場なので店までもわかり一緒に歩いている気持ちになれて楽しんだ。

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辺境・近境 への2件のフィードバック

  1. Michiko Michiko のコメント:

    村上さん、今回もノーベル賞を逃して残念でした。でも、村上さんならノーベル賞受賞がなくても素晴らしい作家であることは間違いないですし、ノーベル賞はいつかは受賞されるかも。
    ハルキストと言われるほどのファンではないけれど、いくつかの作品は楽しませて貰いました。
    村上さんならではの紀行文、そのうちに読ませて貰います。私にとってはBreezeさんの紹介というのも良いきっかけになっています。これからも宜しくお願いします。

    • Breeze Breeze のコメント:

      Michiko様コメントをありがとうございます。
      私もMichikoさんの読書紹介を楽しみにしています。
      今回ははからずもノーベル文学賞選考の時期に春樹さんの本を読んでいて、「今年こそは、、」と期待されていたことに気付きました。
      残念ながら選考されませんでしたが、私は去年の時点で春樹さんは選ばれないと思っていました。
      だって日本で過去に選ばれた方が、川端康成さんと大江謙三郎さんですもの明らかに<文学>としての見方が違うと思います。
      ノーベル文学賞は選考委員の方達は、文学者か小説家かどちらに重きを置いているのでしょうか?
      私達ハルキストは村上春樹さんを偉大な小説家としてファンになっているのだと思うのでノーベル文学賞は選ばれても辞退されるぐらいのことを期待したいです。

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