釈迦 瀬戸内寂聴著 新潮社
仏教の祖である釈迦(世尊)・ゴータマブッタの伝記小説である。
ブッダの生涯ずっと傍らに付き添った弟子アーナンダが80歳を過ぎた世尊の最後の遊行を共に歩きながら語り部となって話が進められる。
ルンビニでの誕生から入滅の地ヴェーサーリーまでの足跡が思い出として語られるなかで釈迦のことが分かるようになっている。
私は京都で育ちながら家がクリスチャンだったので仏教について無関心で数年前まで全く無知であった。
ネパールに関わるようになってルンビニを訪れてから急に仏教についての関心が高まり、最澄→空海→法然→道元→親鸞→良寛と次々伝記を読んだ。でも肝心の仏教の祖であるお釈迦様についてよく分からなかったのでこの本を手にした。
瀬戸内晴美・寂聴さんの本はちょっと苦手でこれまであまり読んだ事がなかったのですが、「釈迦」を読んでまず文章の美しい事に驚いた。そのためだと思う。仏陀の言葉がじんわりと心に響き心が洗われるような清々しさを感じた。
釈迦の教えでは女人は魔物であり避けるべきものだということから始まる。だから女には最初出家が許されなかった。それをアーナンダの説得で釈迦入滅間近になってから女の出家が認められるようになる。
驚いた事に初代の尼僧院の院長は仏陀の養母マハーパジャーパティで2代目は仏陀が捨てた妻ヤソーダラーなのである。
瀬戸内寂聴さんは出家されて30年以上にもなられますが、仏教における女性の位置づけについて何度も考えられたに違いないと思う。
この本は単なる偉人伝ではなく、ブッダの人間性に彼を取巻く女性の生き方を巧みに絡ませて書かれ、実は現代にも通じる<女性の生き方>がテーマとなっているのではないかと思った。
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