終わらざる夏

「終わらざる夏」浅田次郎著 集英社文庫 上中下
作家浅田次郎が、どうしても書き遺したいと30年かけて書き上げたというのを新聞で知り、8月15日の敗戦記念日までに読んでおきたいと思っていた。
文庫本上中下。内容もずっしり重く感動をよぶ本だった。
(私にはあらすじを纏めきれないので案内書から抜粋します)
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昭和初期、西洋文化あふれる華やかな東京の翻訳出版社に勤める片岡は、いずれ妻と息子と共にアメリカへ移住するのが夢だった。しかし、時代は戦争へと突入、戦局悪化により、高齢の片岡にまで赤紙が届く。召集先は、千島列島の最先端・占守島(シュムシュ島)だった。
1945年の日本降伏宣言のあとの8月18日、島全体が日本最強の軍事基地だったところに、突然ソ連が攻撃する。圧倒的に日本が優勢だったが、9月2日に日本は敗戦国として戦いは集結され、軍人達はシベリアに連行され過酷な捕虜としての扱いを受ける。
片岡や、その家族の物語を軸に、志ある医学生、歴戦の軍曹、若き参謀、ソ連軍兵、女子挺身隊員など、夢を抱いたごく普通の市民達が戦争に巻き込まれていくさまを多視点で語り、戦争という理不尽を重層的に描き出す。
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赤紙一枚で強制的に兵士として何万人もの市井の人々が戦争に駆り出され、何万人の人々が殺された悲劇は、後世映像化されたりして語り継がれてはいるが、真実は教えられてはいないのではないか。
この本で真実を理解できたとはいえないが、実際にあった事実をしかと認識され、どんな理由があろうとも<戦争は絶対にあってはならない>ということが、はっきり分かった。
作家の佐藤優さんがコメントされているように、トルストイが書いた「戦争と平和」の日本版の壮大な「戦争と平和」であると言える。
戦争のこともだけれど、それ以上に平和についてつくづく考えさせられる良書でした。

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