「神様の住所」九螺(くら)さらら著
2019年を迎えました。
お正月にふさわしい呑気に楽しみながら読める本として革新短歌作者“くらさらら”さんの「神様の住所」を手に取りました。
現代短歌の先駆者、俵万智さんの「この味がいいねと君が言ったから7月6日はサラダ記念日」という句が出て話題になったのは30年も前のことでした。
現代短歌にはあまり馴染みがないのですが、カバーにある「短歌がいり口で、宇宙が出口」という、革新短歌の宇宙を、哲学的な輝きで新たに飲み込むという紹介文に惹かれて買いました。
本書の楽しみ方として、<テーマに応じた短歌を冒頭にして、その短歌についての解説とも読めるような散文、そして最後にまた短歌、という項目が全部で84ほど収録されています。>とあります。
さて、楽しみながらページを繰ったことは実にはっきり言えますが呑気には読めませんよ。
深く・じっくり・考えさせられる・楽しく・面白い・考えもつかない発想の項目がぎっしり。
1項目2~3ページですがその1項目で手が止まり頭が回転、、、、。
たとえば
・部首の項 空の部首はあなかんむり宇宙はうかんむり空は穴宇宙は【果・端】のない穴
→雑感→乙の名はつりばりである乙女とは春を釣り上げる清きフェロモン
・ふえるワカメの項 クローンとかAIとか言う前にふえるワカメの森に行こうよ
→雑感→竜宮で浦島太郎がお土産にもらった箱には増えすぎるワカメ
・ものごころの項 ものごころついたころからみぞおちの辺りに棲みついたかなしい魚
→雑感→「ものごころ植物園」に入ってくそこらじゅうで発芽するものごころ
読みたくなりませんか?裏切られません。1700円の価値あります。
おりしも昭和天皇が推敲されたという和歌の数々が発見されて新聞に取り上げられていますが、5・7・5・7・7の五句31音の中にここまで心に湧き出る思いを深く表すことのできる和歌ってすごいなあと今更ながら感動し、日本古来の文芸を大切に守りたい、というか、守ってくれる人がいてほしいと思いました。