「生かされて」 イマキュレー・イリバギザ著 PHP出版
1994年4月。ルワンダで起ったフツ族ツチ族という民族間の闘争が引き起こしたジェノサイド(大量殺戮)のことを、どれだけの人が知っているのでしょう。100日間で100万人が殺されたのです。それは私の記憶に新しい6000人が亡くなった阪神大震災の1年前という最近のことです。
この本はその壮絶な戦いから生還したイマキュレー・イリバギザさんの手記です。
地震や台風などの災害による犠牲者ではありません。人間による同じ人間に対する殺戮です。原爆のように一瞬で殺されるのでもありません。耳・鼻・手足・頭を大鉈で切られレイプされ殺されるのです。昨日まで友だちだった人、昨日まで信頼しあった兵士でもない普通の人が殺人者に早変わりするのです。
ツチ族のイマキュレーさんはフツ族に捕らわれて殺されて当然という状況の中で、その3ヶ月間、奇跡的に、小さなトイレに7人の女性が折り重なって匿われ、ぎりぎりのところで開放されて生き残ったのです。
彼女の両親兄弟は外国に留学していた兄一人を除き、顔見知りであった人々も交わるフツ族の人々に全員が惨い殺され方をします。
後日イマキュレーさんが現地を訪れた時、父を殺した首謀者がイマキュレーさんの前に引きずり出されました。彼はかって立派なフツ族の実業家で、イマキュレーさんの家族もよく知っていた人です。イマキュレーさんは悲しみで胸が潰れる思いにとらわれながら、ぼろぼろになってうずくまる殺人者の手に触れ、口に出た言葉は<<「許します」>>でした。
この本は“許し”の本です。
ブログ「私の本棚」で4月23日に取り上げた「白夜行」(親が理不尽な殺され方をした子供の復讐小説)の紹介文の中で私は「許し」という言葉に触れました。
「許し」というのは、戦いにおける最高の「切り札」だと私は思います。死んで生きるための切り札です。
死んだら終わりという無宗教者や無神論者にとっては「許し」は負けになるのかもしれません。
カトリック教徒の私にとってはインパクトのある感動の書でした。
私の信仰心の薄さを、しっかり自覚させられましたが。
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